プロ初勝利、初完封、球宴初出場...順風満帆から一転、ソフトバンク大関友久がガン疑いの発覚直前に語っていたこと (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • photo by Koike Yoshihiro

 全セの1番・塩見泰隆(ヤクルト)に初球をレフト前に運ばれた。すぐさま二盗を決められて、2番・近本光司(阪神)は打ちとったはずの打球を内野安打にされた。そして近本にも二盗を決められて無死二、三塁。だが、そこから踏ん張った。牧秀悟(DeNA)はレフトフライ。犠飛となり1点を失ったが、続く現役最強打者・村上宗隆(ヤクルト)は高め150キロ直球でセンターフライ。そして佐藤輝明(阪神)にも直球勝負で同じく中飛に仕留めた。大関の初めてのオールスターは1回13球、2安打、1失点の結果だった。

 はたして、大関がオールスターで得た収穫とは何だったのか。

「思いきって勝負することしか考えられなかった。それはできましたけど、まだまだ力で抑え込める力はついてないなと思いました」

 ただそれより──と大関は言葉を継ぐ。

「いろんな人と話ができこともよかったですが、見たり感じたりしているなかで、自分のなかに入ってきた雰囲気を肌で感じとれたことがすごく大きかったです。プレーをひとつとってもそうだし、それぞれの選手同士の会話、そしてスタンドのお客さんの歓声や高揚感......そこから受けた刺激がすごく大きかったです」

 プロ野球とは何か? スターとは何か? あの2日間で思いを巡らせたという。

「細かなプレーはもちろん大切だけど、スケールや迫力といったフィーリングで感じとれるものだったり、飛び抜けたものや誰の目から見ても光るものだったり、プロ野球にはそれが必要なんだと思いました。それでまでは、たとえば打者を抑えるにしても、その理由(技術や駆け引きなど)は周りにわからなくても自分さえわかっていればそれでいいと思うほうでした。それがひとつのよさと考えていましたけど、それじゃダメなのかなって。周りの選手、そしてファンが納得してくれたうえで結果を出す。そういったことを求めるのがプロでは必要じゃないかと。まだ探り探りですけど、そういう思いが芽生えたのは確かです」

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