偶然と必然が織りなす「全打順本塁打」の味わい。ロッテ中村奨吾に続く達成者は? (2ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Koike Yoshihiro

 また現在ロッテの監督を務める井口も入団当初は下位からスタートし、その後、中軸として活躍。2003年にチーム打率.297を誇った"ダイハード打線"では、3番打者として日本一に貢献した。だが当時は、2004年に三冠王を獲得する松中信彦という"不動の4番"がいたため、井口が4番に座ったのはメジャーから日本球界に復帰した2009年のロッテだった。

 これとは逆に、主軸から下位へと打順を下げて達成したのは、川上哲治や千葉茂とともに巨人「花の(昭和)13年入団組」のひとりである岩本章。巨人から名古屋(現・中日)に移籍後、本塁打王を獲得するなど主軸として活躍したが、「全打順本塁打」は広島時代の8番で達成した。

タイトル獲得者も多数

 全打順を任されるだけあって、スラッガーはもちろん、俊足選手もいて、多くのタイトル獲得者がいる。

■本塁打王
岩本章(1943年)、T−岡田(2010年)、浅村栄斗(2020年)

■打点王
田中幸雄(1995年)、浅村栄斗(2013年)、島内宏明(2021年)

■最多安打
中村晃(2014年)

■最高出塁率
栗橋茂(1980年)、松永浩美(1989年)

■盗塁王
松永浩美(1985年)、井口資仁(2001年、2003年)

 また達成者22人中、200本塁打以上の打者は8人もいる。島谷(229本)、山崎(270本)、栗橋(215本)、松永(203本)、田中(287本)、井口(251本)、浅村(242本)、T−岡田(204本)だ。
※2022年6月26日現在

 一方で、本塁打が最も少ないのは五十嵐の26本。しかし五十嵐は2000年に史上2人目の「全ポジション出場」も達成している。「全打順」「全ポジション」と、その打順に応じたバッティング、そのポジションに応じた守り。まさに球界最高のユーティリティ・プレーヤーと言っても過言ではない。

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