「勝利を求めればいい、という考え方は時代遅れ」。ソフトバンクGMが語る野球競技人口減少への対策やNPBの未来 (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【世界一を目指すからこそ...】

「単に両手を挙げて『協力する』と伝えたのではなく、『僕らの強化に役立たないくらいのレベルであれば、試合はしない』とも言いました」

 三笠GMがそう伝えたのは、片方に負担がかかる"慈善事業"的なあり方でなく、"win-win"を創出していくことが"サスティナブル"につながるからだ。

 日本で2005年にスタートした独立リーグは、約30球団まで膨れ上がった反面、ほとんどが経営的に芳しくない。一方、社会人野球で企業チームが減るなか、独立リーグが受け皿になっているという意義はある。

 独立リーグが存続できる背景には、巨人やロッテなどとの交流戦が収益源になっていることもある。現状、NPBの二軍は"コストセンター"だが、独立リーグも加え、MLBのマイナーリーグのように独立採算制を模索する道はないだろうか。

 以上のような話が、すでにNPBのオーナー会議で議題に挙がっているという情報もある。

「そういう話もやっていきたいと思っていますが、まずはコロナから明けてホークス自体が事業を正常に展開できることが第一優先だと思っています。共倒れしても仕方ないですから」

 三笠GMはそう話すと、大所高所な視点から続けた。

「プロ野球、独立リーグ、アマチュアについて、再構成を考えること自体は常にやるべきだと思っています。それにはふたつの意味があり、ひとつはプロ野球というトップレベルに行く選手を輩出する母体として、今の高校、大学、社会人、独立リーグ、プロ野球のファームという分け方が本当に適切なのか。その検証はするべきだということです」

 もうひとつの意味は、野球選手のキャリアという観点だ。

「プロ野球は"芸人養成機関"のようなもので、成功するのはひと握り。そういう人がメジャーリーグなどトップレベルで戦っていくという世界です。幾多の競争主義のなかでやっていく選手の生活を担保しながら、その競争から下りる人のセカンドキャリアも担保しないといけない。

 そういう意味でアマチュアとプロ野球のファームを合わせて、どういう形が適正か。"プロアマの壁"なんてものは関係なく考えるべきではと思っています」

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