ベイスターズ、最下位からの反撃へ。最先端テクノロジーを強化・育成にフル活用 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

【オフは又吉の獲得に動いたが...】

 たとえばNHK BS1のテレビ番組『球辞苑』によると、2021年シーズンに守備シフトを敷いた回数は12球団最多だった。

 また、昨季来日した右腕投手フェルナンド・ロメロは5月の4試合で防御率7.80と打ち込まれて二軍落ちしたが、後半戦に巻き返して防御率3.01でシーズンを終えた。活躍の裏にはファームでの取り組みがあったと、壁谷部長が振り返る。

「ファームでは大家友和投手コーチが中心に、バイオメカニクスやデータサイエンスに長けたR&Dのメンバーと、アスレチックトレーナーが常に連携しています。ロメロは得意のツーシームと対になるボールが必要という話になり、ファームにいる間に大家コーチからカットボールを教え込んでもらいました」

 シーズンオフには、全選手に対してコーチとアナリストが各種成績やトラッキングデータを用いてフィードバックし、翌年に向けた改善点を共有する。DeNAでは動作解析のテクノロジー「オプティトラック」やハイスピードカメラを用い、「選手にとって意味のあるフィードバックをできるようになった」と壁谷部長は言う。

「テクノロジーを用いて改善のヒントが出てくるようになったことに加え、選手がわかる言葉で"翻訳"できる投手コーチや、動作を説明できるバイオメカニクスの人たちがいることも大きいと思います。選手の課題に対するソリューションまで出せるようになりました」

 ベイスターズにおける「R&D」の役割は、「編成、戦術、育成」の3つに及ぶ。後者2つはイメージしやすいだろうが、編成にはどう活かされているのか。

「ここはデータサイエンスが大きく活用できる部分です。チーム全体の戦力の分析や、他球団と比較した分析をすることもあれば、選手個々のパフォーマンスの予測もします。それに基づいて、契約をどうしたほうがいいかも考えられます」

 DeNAは2021年オフ、FA市場に出た唯一の選手である又吉克樹の獲得に動いたと報じられた。冒頭で述べたように、ブルペンは補強ポイントのひとつだった。

 だが、又吉は「パ・リーグで挑戦したかった」とソフトバンクへの入団を決める。中日時代の前年は推定年俸4200万円だったが、新天地では同4年総額6億円。ソフトバンクは国内随一の資金力を誇り、他球団にとってマネーゲームでは勝ち目が薄いだろう。

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