「天才が努力すれば結果はついてくる」。ヤクルト・川端慎吾は首位打者から「代打の神様」になった (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 3月24日、チームはコロナ禍の影響で公式戦の開幕が延期されたことで、二軍の戸田球場で全体練習を行なった。

「おー慎吾、大丈夫か?」

 ベテラン左腕の石川雅規が川端の姿を見つけると、懐かしそうに声をかけた。

「はい、大丈夫です」

 リハビリで戸田を訪れていた川端は笑顔で返すと、隣接する陸上競技場へ移動。ゆっくりとした動きで、一歩一歩を確かめるようにタイムを確認しながらトラックを周回していた。2015年のポール間ダッシュを思い出すと、それはショッキングな光景だった。

 しかし、川端は脅威の回復力で7月に一軍復帰。同25日の巨人戦でサヨナラヒットを放つなど劇的な復活を遂げたが、長くは続かなかった。2020年シーズンは39試合、打率.128、放ったヒットはわずか5本だった。

 これまでファウルにできていたボールを空振りし、あっさり打ちとられてしまう打席も多くなった。なにより、スイングと打球に力がない印象を受けた。

【代打で結果を出すため打撃フォームを改良し、考え方も変えた】

 今シーズンは二軍の西都キャンプ(宮崎)からスタート。川端は「代打で打つにはどうすればいいのか......」とトップの位置など打撃フォームを改良し、打席での考え方も大きく変えた。

「5、6年前はもっと動きながらタイミングをとっていたのですが、今は本当にシンプルに、どんなボールがきてもタイミングが合うようにしました。4打席あればタイミングは合わせられるのですが、代打は1打席しかないので、初球からタイミングを合わせられるように動きを小さくしました」

 シーズンが進むにつれ、川端は無類の勝負強さを発揮。いつの頃からか「代打の神様」と呼ばれるまでになっていた。

「今は本当に体の状態がよくて、『バッティング練習をしっかりできた』という自信を持って打席に入れています。やっぱり練習をしていないとなかなか自信は持てません」

 7月に入ると、プロ野球は東京五輪の影響で1カ月の中断期間に突入。チームは戸田球場で7日間の全体練習を行なっていたのだが、その4日目のことだった。

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