「天才が努力すれば結果はついてくる」。ヤクルト・川端慎吾は首位打者から「代打の神様」になった (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Sankei Visual

 フルカウントからの6球目、菅野の厳しい変化球を見事にカット。首位打者を獲ったシーズンに見せていた攻撃的なファウルだった。そして菅野が7球目に投じた147キロの速球は外角高めに大きく外れて押し出し四球となり、ヤクルトに貴重な1点が入った。

 遡ること5年前、当時ルーキーだった山崎晃大朗は、川端のファウルを打つ技術についてこんなことを話してくれた。

「僕としては、追い込まれてからは変化球を待って、真っすぐがきたらボールが体を通過するあたりでファウルにしていると考えていたんです。この前、川端さんにそのことを質問したら、逆でした。体のうしろ側に意識を置いて真っすぐを待って、そこに変化球がきたら体の前で対応するということでした。教えてもらったことを二軍の試合で試したんですけど、自分にはまだ無理でした(笑)」

【平均打球速度は118.1キロから135.0キロにアップ】

 11月27日の日本シリーズ第6戦。代打・川端がコールされたのは1対1で迎えた延長12回表、二死一塁の場面だった。マウンドには交代したばかりの吉田凌。気温8度のなかで始まった試合はすでに4時間40分が経過していた。

 5球目にパスボールがあり、一塁走者の塩見泰隆は二塁に進んでいた。フルカウントからの6球目を「ファウルでなんとか粘って、うしろにつなぐ気持ちしかなかったです」とカット。勝負が決まったのは、7球目の内角高めのスライダーだった。川端が振り抜いた打球は詰まりながらもショート頭上を越え、決勝タイムリーとなった。

「打球がどこにいったのかわからなかったのですが、いいところに落ちてくれました。本当に一番いい場面で回ってきて、最高の結果になってよかったです」

 ヤクルトは今年から最先端の映像分析システム「ホークアイ」を導入。これによると川端の平均打球速度は、昨年の118.1キロから今年は135.0キロにアップ。強いスイングが戻ってきたことが、このヒットを生んだのだろう。

 20年ぶりの日本一に喜びを爆発させる選手たちのなかで、ふだんは喜怒哀楽を出さない川端が思いきり泣いていた。

「本当に泣くつもりはなかったのですが、涙が止まらなかった」

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