史上最長の12年連続ドラフト指名。なぜ明治大から多くのプロ野球選手が輩出されるのか (2ページ目)
ただし、金の卵を集めたからと言って、必ずしも孵化するとは限らない。さらに言えば、今年ヤクルトに2位指名された丸山の場合、たしかに高校時代から光るものを持っていたが、バリバリのプロ候補というわけではなかった。
2011年春から明大のコーチを務め、2019年秋に善波達也前監督からバトンを受け取った田中武宏監督が語る。
「高校生の頃はピッチャーをやることもありましたが、足が本当に魅力的な子でした。入学当初から投手ではなく野手でやりたいという本人の希望もあったので、その点で伸ばしていこうと。でも入った時点では、プロ野球というのは私には考えられませんでした」
丸山は前橋育英高校3年夏の甲子園に出場し、3試合で8盗塁を決めて大会タイ記録を樹立した。身長173センチと野球選手としては小柄ながら、50メートル5秒8の俊足を誇り、塁間タイムは高校時代に3.88秒を記録している。
それでも、決して盗塁がうまかったわけではない。むしろ、「下級生の頃は、盗塁のスタートを切る感覚はほかの選手に比べて足りなかった」と田中監督は振り返る。
それが4年生になり、春の六大学リーグで最多タイの6盗塁をマーク。成長の背景には、明大ならではの土壌があった。指揮官が説明する。
「同級生で陶山(勇軌)という1番バッターがいます。その子は高校の頃から1球目から走れる選手で、丸山も参考にしたと思います。今年の春、陶山は6盗塁を記録しましたが、走塁に関しては12球団どこに送り出してもプロのレベルに達してきたと感じています」
事実、丸山は常総学院出身の陶山に教えを乞うた。
「盗塁は陶山のほうがうまいですし、スタートの切り方のコツを学びました。ピッチャーが動いたのを見て、体に伝達するスピードを上げなければいけないと思って、しっかり意識してきました。割り切りも大事だと思いますし、しっかり腹をくくってスタートできるようになりました」
明大には即戦力として入学したものの、直後に右肩を脱臼した。当時の善波監督と田中コーチが相談し、2年生になってから実戦で起用していくことに決めた。
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