2021.08.17

ラオウの覚醒はホンモノか。オリックス・杉本裕太郎が語る自らの変身とソフトバンク松田からの金言

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Koike Yoshihiro

 30歳のシーズン、ラオウがついに覚醒した。

 東京オリンピックによるシーズン中断までの"前半戦"、オリックスの"ラオウ"こと杉本裕太郎が残した数字は打率.297(リーグ6位)、ホームラン18本(リーグ3位タイ)打点54(リーグ5位)。6月半ばからは吉田正尚のあとの4番に定着し、オールスターゲームにも6年目にして初めて選ばれた。しかもホームランダービーに出場し、仙台で行なわれた第2戦では柳裕也からホームランも放った。

 いやいや、これはホントのホントに、ホンモノなのか。

入団6年目の今シーズン、オールスターにも初選出されたオリックス・杉本裕太郎入団6年目の今シーズン、オールスターにも初選出されたオリックス・杉本裕太郎 この記事に関連する写真を見る  何年もの間、夢を見ては裏切られ、終わりかなと思ったら大器の片鱗を覗かせ、よし、信じようと決めたら首脳陣からの信頼を失っていて......そんなラオウに対する期待と不安は、「オレはずっとラオウを信じていた」と涙を流さんばかりに覚醒を喜ぶラオウ好きほど、じつは大きかったりする。その感情は、ほとんど親目線に近い。

「親目線......そう言われれば、そうなのかもしれませんね(笑)。たしかに自信はなかったんですけど、でも僕は途中であきらめるとか、そういう気持ちにはなりませんでした。成功するかどうかはわからなくても、とにかくやってみようと......長いこと、(一軍に)上がってはちょっと打って落ちる、の繰り返しだったんですけど、そのちょっと打った時でさえ、ものすごくうれしいし、気持ちいい。これが1年間、ずっと続いたら最高やなって思っていました。だからあきらめず、一軍の試合で活躍したいという思いを持ち続けてこられたのかもしれません」

 徳島商から青山学院大学、社会人のJR西日本を経てドラフト10位でオリックスに入団したのが24歳の時。2年目にプロ初ヒットとなる初ホームランをバックスクリーンへ放ち、プロ3年目には2本の満塁ホームランを放った。長距離砲の魅力は垣間見せながらも、その3年目のシーズン、一軍出場はわずか7試合、与えられた打席は14。器用な選手を重用する当時の方針もあって、ラオウはチームの構想から外れていた。彼は当時をこう振り返る。