「存在感がまったくない」からの逆襲劇。広島・小園海斗、抱えていた重圧と今の想い (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Koike Yoshihiro

 遠征メンバーから外れて居残り練習で汗を流す日もあった。シーズン終盤にようやく打撃が上向き一軍に昇格するも、スタメン1試合を含めわずか3試合の出場に終わった。結局、2年目の成績は6打数無安打1三振。悔しさの残るシーズンになった。

 数字は残せなかったものの、打撃の基礎を体に叩き込み、1球に対する執着心を養うなど、1年目以上の充実感があった。

「なかなか一軍でプレーできず悔しい1年でしたが、成長できる部分が昨年よりもありました。変われたんじゃないかと思います」

 壁にぶつかったからこそ、自分と向き合うしかなかった。強くなるための第一歩は、弱く未熟な自分を受け入れることだった。

 周囲からの期待が大きいからこそ、求められるものも高くなる。昨年のシーズン終了後に行なわれたフェニックスリーグで、視察に訪れた佐々岡真司監督はこう苦言を呈した。

「小園がさみしい。存在感がまったくない。何も感じない。(来春の一軍キャンプも)帰ってから考える。あの姿勢では......」

 実際、今年の春季キャンプは二軍スタートとなり、一度も一軍に呼ばれることなく開幕を迎えた。

 ところが、ショートのレギュラーだった田中広輔の不振が続き、二軍で好結果を残していた小園にチャンスが巡ってきた。

 4月22日に一軍昇格を果たすと、すぐにスタメンを勝ち取った。新型コロナウイルス感染による離脱があったが、復帰後もショートのポジションを死守。

「ひとつのプレーで流れが変わる。その怖さは知っている。だからこそ、しっかりしないといけない」

 一軍で好結果が続いても、表情を緩めることはない。

 追い込まれたらノーステップにして食らいつき、1打席も無駄にしない。7月4日現在、打率.325という好成績を残している。

 課題とされていた守備でも、高い集中力を保ち、球際も強くなり、守備固めで交代させられる機会も少なくなった。朝山東洋一軍打撃コーチは、小園の成長についてこう語る。

「ほかの若手のようなバタバタ感がない。ただ、今はレギュラーを獲るチャンスだから、一瞬でも隙を見せてはいけないと言っています。でも、ここまでは無駄にするような打席はないです」

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