東京五輪の正捕手に推したい捕手は? 谷繁元信がパ・リーグの捕手を診断 (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 森は入団から長らく、「守備が課題」と指摘されてきた。今季はリーグワーストのチーム防御率4.17だが、谷繁氏は一定の評価を与える。

「バッティングばかりフォーカスされますが、キャッチャーをすごく一生懸命やっています。キャッチング、スローイング、ブロッキングもまだまだ改善の余地があるのは確かです。リードもいろいろ考えてやっているけど、結果になかなか表われていません。

 そこはピッチャーも含めて改善していかないといけないポイントですけど、森を見ていると、バッティングを含めてなんとかしようとする姿勢がすごく伝わってくる」

 高卒8年目の森は25歳で、まだまだ成長途上だ。とりわけ捕手は専門性の高いポジションで、とにかく経験を重ねることが大事だと谷繁氏が続ける。

「たとえば、足のステップと、そこからのスローイング。これらを自分のモノにするには、反復練習しかないんですよね。意識しないでも自然にできるようになった瞬間、『自分のモノになった』と僕は思いました。いざという場面で、自然に体が動くようになるレベルにしておく必要があります」

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 谷繁氏の場合、プロ入り10年目でその域まで到達できたという。高校1年の夏から本格的に捕手をはじめ、10年以上を要した。

「僕の場合、少し遅かったですね。とにかくキャッチャーは、練習を続けていくことが大事です。自分では『十分にやりました』と思っていても、周囲から見れば、自然と動けるようになるまで努力を続けられていない選手もいる。そこまでやり続けないといけない」

 チームにひとつしかない定位置を争い、定期的に出場機会を得るには、秀でた武器が不可欠だ。森のように打撃で欠かせない戦力になれば、首脳陣からチャンスを与えられ、経験を重ねる中で課題を克服していくこともできる。そうした代表例が甲斐で、強肩を武器に育成出身から日本を代表する捕手になった。

 いずれも伸びしろを残すパ・リーグの捕手たちは、今季の混戦の中でどんな成長を果たしていくのか。ペナントレースの行方とともに、キャッチャー陣の奮闘も楽しみだ。

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