里崎智也が北京五輪でもWBCでもプレッシャーを感じなかった理由を明かす (2ページ目)

  • 浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo
  • photo by Kyodo News

――北京五輪では、アメリカと韓国に2回ずつ負け、メダルも逃しました(4勝5敗)。その要因は何だと思いますか?

里崎 それは単純で、一発勝負の国際大会で致命的なミスをしたからですね。北京五輪もそうでしたが、2017年のWBCでは、アメリカとの準決勝で守備のミスから決勝点を奪われた。2013年のWBCも、敗れた準決勝のプエルトリコ戦では走塁ミスが大きく響きましたから。

――3位決定戦でアメリカに負けた後のチームの雰囲気はどうでしたか?

里崎 僕は「終わった。こっからまたシーズンやな」という感じでした。国際大会でもプロ野球でも同じで、勝っているチームは雰囲気がよくて、負けているチームはよくない。雰囲気は結果の後づけなんですよ。大げさに言えば、試合中の雰囲気が本当は悪かったとしても、勝ったら誰かが「雰囲気がよかった」って振り返ると思いますよ。

――五輪期間中に印象的なことはありましたか?

里崎 五輪の時は「窮屈やな~」と思いましたね。ホテルから出られずに、やることもないですし。球場への移動で初めて天安門広場を見た時はテンションが上がりましたけど、それも毎日になると......。しかも練習環境は整っていなくて、バッティング練習なんて4人で3分くらいでしたよ。それで試合は朝やることもあったり(笑)。「アマチュアの大会なんやな」と思いました。

 WBCでは試合前の練習も互いにたっぷりやって、前の試合時間がどんなに伸びてもインターバルはしっかりあった。選手の行動も比較的フリーでしたから、そこの差は大きいですね。

――代表戦でもプレッシャーを感じない里崎さんでも、緊張をするときはあるんですか?

里崎 引退して間もない頃に出演したゴルフ番組が一番プレッシャーを感じました。僕はゴルフがそんなにうまくないんですが、全国放送の番組だったので、「里崎はゴルフもできるのか」と、いいところを見せたい気持ちが強くなって。それでド緊張したんです。

 要は、「自分の能力以上のものを欲してしまうと、プレッシャーと緊張が押し寄せてくる」ということです。それは野球にも通じることで、自分の能力が足りないのに優勝したい、勝ちたい、1軍でプレーを続けたいと思えばプレッシャーも感じますよ。五輪なら金メダル、WBCでは世界一と、目標を高くすればするほど、自分を追い込んでしまうことになる。

 僕は、ゴルフ番組でもまったく緊張しなくなりました。今では「下手なところを見せたほうが逆に面白い」と考えています。自分の能力に見合った見せ方もあると思うようになってからは、プレッシャーを感じることはなくなりました。

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