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あと9勝で200勝も松岡弘はなぜ引退したのか。八重樫幸雄が感じた「心のスタミナ切れ」 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【カラオケでは吉幾三と石川さゆりを熱唱】

――それにしても、200勝を達成してほしかったですね。

八重樫 スワローズでは金田正一さん以来、200勝投手はいないでしょ。その最初の人が松岡さんになると思っていたから、僕も本当に残念でした。残り4~5勝までいっていれば、心のスタミナが切れることなく、石にかじりついてでも達成できたかもしれない。その点は本当に残念だったな。

――これは以前、松岡さんご本人から伺ったんですけど、「みんなは残り9勝で惜しいと言うけど、僕は191勝したことよりも、190敗したことを誇りたい」と言っていました。その理由を聞くと、「普通は190敗もしたら、試合で投げさせてもらえない。でも、それだけチームから、みんなから信頼された証だから」と言っていました。

八重樫 そうだね。みんな松岡さんを信頼していたね。「他に投手がいなかった」というのも事実だけど、実際に1970年代の松岡さんは本当によく投げていました。勝っても、負けても、全力で投げていた。確かに「190敗」という数字は誇れるものかもしれないですね。

――結果的に1985年シーズンを最後に、松岡さんは191勝190敗で現役を引退。その後すぐに二軍投手コーチになりました。当時の八重樫さんはまだ現役選手でしたが、引退後の松岡さんの印象に変化はありましたか?

八重樫 現役時代のようにピリピリした感じがなくなって、角が取れたというか、ちょっと明るくなりましたね。二軍のコーチというのが性に合っていたのかもしれない。真っ黒になって練習していたようですから。

――ところで、プライベートの松岡さんはどんな方なんですか?

八重樫 僕がコーチになってから、コーチ同士でカラオケに行くこともあったんだけど、松岡さんは自らマイクを持って、なかなか離さないんですよ(笑)。何枚もレコードを出しているだけあって、本当に上手でね。

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