八重樫幸雄が許せなかったエースの暴言を初告白。「なんであんなサインを出すんだ」 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【今でも許せない、「あの出来事」を初告白!】

――またまた意味深な発言(笑)。「あの出来事」とは何ですか?

八重樫 荒川博監督の時代だから、1976年ぐらいだったかな? バッターのバットが当たって、大矢さんが右手を骨折して試合に出られない時期があったんです。その時に、僕が松岡さんとバッテリーを組んだんだけど......あれはナゴヤ球場の中日戦でしたね。

――いったい、その時に何が!

八重樫 それで僕が試合に出ることになったんだけど、試合前のバッテリーミーティングの時に、コーチから「サインは松岡に任せておけ」と言われました。それで、試合で松岡さんが連打を浴びて失点して、ようやくチェンジになってベンチに戻ってきた時ですよ......。

――次の展開が予想できます(笑)。

八重樫 ......松岡さんが大きな声で、「八重樫、なんであんなサインを出すんだよ」「どうして、あそこで真っ直ぐなんだよ」って、ベンチ内で聞こえるような大声で叫んだんです。結局、試合に負けたんだけど、次第に腹が立ってきてね。僕がサインを出したわけでもないのに、全部、僕のせいにされたわけですから(笑)。

――その場はグッと呑み込んだんですか?

八重樫 その場も、その後もずっと呑み込みましたよ。今、初めてしゃべった(笑)。ただ救いだったのは、監督とコーチ、ベンチにいた数人の選手は、松岡さんがサインを出していることを知っていたんです。松岡さんがベンチ裏に下がった時に、大矢さんは僕のところに来て「気にするなよ」って言ってくれました。

――大矢さん、いい人だ(笑)。でも、エースのプライドというか、松岡さんなりの意地みたいなものを感じますね。

八重樫 意地は感じるけど、こっちとしてはたまったもんじゃないよね(笑)。もしも、「八重樫、悪かったな」と言われたら、こっちとしても「いえ、次は抑えましょう」っていう気持ちになるけど、いきなり僕のせいにされたら、いい気はしないよね。今回、初めてこの話をしたけど、ようやくスッキリした。もちろん、お互いに現役を辞めてからはいい関係が続いていますよ。まだまだ話はあるから、次回も松岡さんの思い出話を続けましょうか。

――ぜひぜひ、次回も引き続き「松岡話」でお願いします!

(第62回につづく>>)

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