監督に暴行、教師を妊娠...ネットでのデマ、中傷に負けず泉正義が野球を続ける理由
『特集:We Love Baseball 2021』
3月26日、いよいよプロ野球が開幕する。8年ぶりに日本球界復帰を果たした田中将大を筆頭に、捲土重来を期すベテラン、躍動するルーキーなど、見どころが満載。スポルティーバでは2021年シーズンがより楽しくなる記事を随時配信。野球の面白さをあますところなくお伝えする。
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練習中のグラウンドを訪れると、お揃いのパーカーを着た中学球児たちが力強く挨拶してくれた。黒地のパーカーの胸には「JUSTICE」の白抜き文字に、階段のイラストがプリントされている。
「JUSTICE」を日本語に訳すと「正義」になる。監督の泉正義(まさよし)は言った。
「まあ、僕のことですよね。階段のマークを入れたのは、『上る時は一段一段だけど、さぼると転げ落ちるよ』と伝えたかったんです」
階段の説明に深い実感がこもっているように感じられたのは、泉の過去にまつわる噂を耳にしていたからだろうか。
かつてヤクルトでプレーした泉正義氏 身長188センチの大きな体、整えられたあごひげに澄んだ瞳。ワイルドさと純真さが同居した風貌には、人を惹きつける不思議な色気がある。36歳の泉は現在、栃木県の中学硬式野球クラブ・日光ヤングスワローズの監督を務めている。
かつてはヤクルトに所属した、プロ野球選手だった。といっても、泉がプロで残した実績は皆無に等しい。在籍3年間で一軍出場はおろか、二軍での出場すらなかった。
その代わり、泉の「武勇伝」は中学時代からまことしやかにささやかれてきた。
・中学時代に起こした乱闘事件が原因で地元の名門校への進学が取り消されたらしい
・チームの監督を殴って謹慎したらしい
・中学校の先生を妊娠させ、子どもがいるらしい
・あえて対戦相手のベンチ前でキャッチボールし、自慢の強肩を見せつけていたらしい
いくつもの「らしい」が泉を取り巻き、いつしか真実であるかのように一人歩きしていった。
その一方で、現在の泉は選手に対してこんな話をするという。
「俺みたいな選手をもう生みたくないから、監督をやってるんだ」
真偽不明の噂が渦巻き、今もなお指導者として野球界に携わる泉正義とはいったいどんな野球人なのだろうか。
瀬谷シニアの泉と言えば、世代を代表する逸材としてその名が全国にとどろいていた。中学3年生にして140キロ台前半の快速球を武器に、シニア全国選手権など全国優勝すること二度。シニアの全国決勝で投げ合ったのは、緑東シニアの高井雄平(現・ヤクルト)だった。
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