オリックスが「球界初」の攻めた姿勢。なぜ「素人」メンタルコーチを導入? (3ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 近年、グラウンド上ではトラックマンやラプソードなど、最新機器がパフォーマンスアップに活用されている。ボールの回転数や回転軸など、かつて"見えなかったもの"をテクノロジーで可視化する流れは、メンタルトレーニングにも及んできた。

 たとえば「Omegawave(オメガウェーブ)」という機器を使えば、脳波や心拍変動を簡単に測定できる。試合前に数値が乱れていれば、コーチがリラックスさせるような声をかけ、心を安定させてからグラウンドに送るという使い方もある。「オメガウェーブ」はメジャーリーグやNFLなどで導入が進み、Jリーグのファジアーノ岡山はユース世代に取り入れている。

 対して、オリックスでメンタルコーチの任を受けた酒井コーチは、若手選手により近くから寄り添うことで、飛躍に導こうと考えている。

 専門家ではないものの、現役生活8年のうちに優勝争いを経験し、二軍で約20年の指導歴は独自の強みだ。これまでも本を読んで自学してきたが、春季キャンプまでのオフ期間にスポーツメンタルトレーナーと心理カウンセラーの資格を取得し、より効果的なコミュニケーションを取れるように学んだ。

 とりわけ力を入れるのが「目標設定」の具体化で、模範となるのが新旧エースのふたりだという。

「山本由伸とタイガースに行った西勇輝は、ともに高卒1年目から見ていました。彼らは見据えている目標が遠すぎず、近すぎない。

 たとえば、一軍で全然投げていない選手が『僕はメジャーに行きたい』と話すのは、目標が遠すぎます。『今の僕にはこういうことが必要ですよね?』とか『一軍に定着するには何が求められますか?』などと、身近な目標の会話をできることが大事。山本や西は、1年目からそれができていました」

 昨季までは、選手個々と目標を言葉で交わす程度だった。今年は二軍で飛躍を待たれる各選手について、担当コーチが『今年の目標』をレポートに書いて提出し、酒井コーチが選手たちと会話を重ねながら行動をより具体的にしていく。たとえばプロ未登板の投手が「一軍で投げる」という目標をぼんやり掲げるだけでなく、そこにたどり着くまでに何が必要かを二人三脚で考えていくのだ。

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