戦力外報道に「だろうな」。巨人・野上亮磨が語った今季にかける思い (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 野上には、思い描いているストレートのイメージがあるという。

「感覚的には、(ボールに)指の第一関節全部をつけたいんです。投げ終わって、第一関節の横線が全部汚れているような感じがベストです。その分、ボールにスピンを利かせるイメージで」

 昨年は、このストレートが投げられなかった。それどころか、投げてもヒジに張りすら出なかったという。野上は「それだけ腕が全然振れていなかったのだと思う」ととらえている。

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 2021年の春季キャンプ。ここまで二軍で調整する野上だが、左足はまったく問題ないそうだ。

「左足は完治しているので、痛みはまったくありません。走り込みも多めにしているので、左足のふくらはぎもいい感じに張って、しっくりきています。調子自体も順調にきているので、これからまだまだ上げていけたらと思います」

 故障をしてからウエイトトレーニングの量を増やしたことで、下半身の筋肉がほどよく張るようになった。ようやく自分の体として馴染むようになり、昨年にはなかった「下半身を使えている」という感覚が芽生えつつある。

 もう後がない焦り以上に、野球ができる充実感がうかがえる。目の前の本人に「表情が明るいように感じます」と伝えると、野上は笑顔でこう答えた。

「ケガした時間をプラスにとらえてやってきて、今ちょっと前向きにやれているんじゃないかなと思います。足でビー玉をつかんでいる時期と比べたら、もう全然違います。きついトレーニングでも、今は自分のためと思ってやれますから」

「戦力外通告の有力候補」といったネガティブな声が本人に届く一方で、ポジティブな声も本人に届いている。当然、野上という野球選手を変わらず応援しているファンもいる。そんな人々に、今季はどんな姿を見てもらいたいか。そう聞くと、野上は少し考えてからこう答えた。

「人生のなかで、へこむ時は絶対にあると思うんです。僕は去年、だいぶ落ち込んだので。そこからもう1回、立ち直って......そういう姿ですかね。あきらめないという姿を見せたいですね」

 クールに見えるマウンド姿の内側には、いつも熱いものがたぎっている。野球人生をかけた33歳の挑戦が始まっている。

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