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戦力外報道に「だろうな」。
巨人・野上亮磨が語った今季にかける思い (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

「最初はスパイクが壊れたと思ったんです。でも、スパイクを見ても何ともなくて、左足を一歩踏み出したら、もう力が入らない。あ、これやったわと。アキレス腱を触ったら、『ぶにゅ』っていう感触があって。これは切れたな、と思いました」

 左足アキレス腱の断裂。「終わった」という実感は、野上の2019年シーズンが終わったという意味ではない。野球人生が終わったという意味だ。

 投手の故障といえば投げ腕の肩かヒジが相場だが、アキレス腱断裂という例は少ない。まして復活した投手など、数えるほどしかいない。ベッドの上で焦燥感を覚えても、何もできないもどかしさばかりが募った。

「足のケガなので、何もできないですからね。それはきつかったです」

 やがてリハビリが始まったが、単調な日々に目的意識が揺らぐこともあったという。

「ビー玉を足でつかんで、移して......っていう作業とか、地味なことばかりやっていたので。本当に意味があるのかな。何のためにやっているんだ? と思うことはありました。でも、そういうのもコツコツやっていくしかないのかなと」

 孤独なリハビリの日々を支えたのは、家族の存在だった。2020年1月には第2子となる次男が誕生している。「家族のために」という思いとともに、野上の脳裏に去来したのは、「自分のために復活したい」という思いだった。

 いつも涼しげな表情の、飄々としたマウンドさばきからは野上の野球選手としてのエゴはあまり伝わってこない。だが、「野上亮磨」という野球選手であり続けたい強烈な思いが、野上を衝き動かした。

「結局は自分がやらないといけないので。やっぱり野球選手としてまだ投げ続けたい。その思いはありますよね」

 2020年2月にはブルペンでの立ち投げを再開し、6月にはファームで実戦に復帰する。だが、結果は伴わなかった。イースタン・リーグでの成績は、18試合登板で0勝3敗、防御率4.98。左足の痛みは取り払われているというのに、最後まで違和感が拭えなかったと野上は振り返る。

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