ソフトバンクにまだこんな投手が。
尾形崇斗に漂う次世代エースの予感

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 昨シーズンのソフトバンクは強かった。とりわけ強烈な印象として残っているのが、巨人を4タテした日本シリーズの戦いだった。

 4試合トータル「26対4」という圧倒的な得点差にも驚いたが、それ以上に入れ替わり立ち替わりマウンドに上がるソフトバンク投手陣の誰もが、150キロ前後の快速球を投げ込んでいたことだ。

 先発した千賀滉大、石川柊太、マット・ムーアだけじゃない。リリーフとしてマウンドに上がったリバン・モイネロ、岩嵜翔、杉山一樹、椎野新、松本裕樹に守護神・森唯斗まで、力のあるスピードボールで巨人打線を圧倒しまくった。

 そんな磐石の投手陣を擁しながらも、次世代のエース候補もしっかり育っているのがソフトバンクのすごさであり、4年連続日本一を達成している要因なのだろう。

昨年、プロ初登板を果たしたソフトバンク・尾形崇斗昨年、プロ初登板を果たしたソフトバンク・尾形崇斗 なかでも期待しているのが、4年目の尾形崇斗(しゅうと)だ。学法石川(福島)から2017年に育成ドラフト1位で入団し、昨年3月に支配下登録された21歳の右腕だ。

 これまで一軍登板はわずか1試合。そんな投手を次世代のエース候補に挙げたのには、はっきりとした理由がある。それは、尾形にはストライクゾーンで空振りが奪える強烈なバックスピンが効いたストレートがあるからだ。

 現エースの千賀が、プロ2年目にウエスタン・リーグで投げていた「快速ストレート」と同じ球だ。

 昨年11月のフェニックスリーグ。巨人の若手相手に2イニングで3奪三振のピッチングを見て、「ずいぶんピッチャーらしくなったなぁ......」と思った。力の強弱のつけ方がじつにうまくなっていた。

 高校時代の尾形のピッチングを一度だけ見たことがある。3年夏の最後の大会だった。「最速147キロ」と評判の投手だったが、その期待に応えなきゃという気負いからか、明らかに本調子とはほど遠いピッチングに映った。

 スピードはそれなりに出ていたと思うが、ボールが打ちやすいコースに集まるから、簡単に合わせられる。8イニングで10本近く安打を打たれ、県ベスト8で姿を消した。その試合に勝てば県内で無敵を誇る聖光学院との対戦だっただけに、じつに惜しかった。

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