歴代No.1の破壊力と実感。山下舜平大が
加入でオリックスに投手王国の予感

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

 JR東日本の田嶋大樹がドラフト1位でオリックスに入団して最初のキャンプだったから、2018年の2月のことだ。

 紅白戦が始まり、投手が1イニング交代で次々とマウンドに上がる。どの投手もピリッとしない内容が続くなかで、何人目かに登場した右腕の猛烈な腕の振りに目を奪われた。今どきのプロ野球選手にしては小柄なユニフォーム姿だが、ボールには"角度"があった。

 投球練習を見ただけで只者ではない雰囲気が漂っており、「またイキのいいピッチャーが出てきたな」と胸が躍ったのを、今でもはっきりと記憶している。

昨年秋のドラフトでオリックスから1位指名を受けた山下舜平大昨年秋のドラフトでオリックスから1位指名を受けた山下舜平大 打者3人と対峙し、2人の右打者がインコースを突かれてバットを粉砕させられた。そのボールは間違いなく"シュート"だった。並のインコース攻めじゃない。しっかり指にかかった正真正銘のシュートだ。若いのに打者の体の近くに投げる意図と技術を、すでに身につけていた。

 都城高(宮崎)に山本由伸という快速投手がいることは知っていたが、実際にピッチングを見たことはなかった。正確にいうと、見損なっていた。

 山本が高校3年の春の県大会。雨のなか観戦に訪れたのだが、山本の前の試合が終わったところでグラウンドコンディション不良で順延となってしまった。せめてバスで帰る山本の姿だけでも......と思って駐車場に行くと、背番号1が思ったより小さかったことを覚えている。

 それから数年が経ち、山本は押しも押されもせぬオリックスの中心選手となった。入団4年目の昨シーズン、18試合に先発して8勝4敗、防御率2.20。2ケタ勝利には届かなかったが、相手のエースと投げ合っても一歩も引かない投げっぷりは、まさに「エースのピッチング」である。

 しばらくは山本がオリックスの投手を牽引していくことは間違いないだろう。そこで長く優勝から遠ざかっているオリックスにとって、重要になるのが山本に続くピッチャーである。

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