2021.01.13

「本当によく酒を飲んだ」安仁屋宗八。
初めてオフに遊ばず防御率1位

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 試合前、三塁側ベンチにいる安仁屋さんに挨拶に行くと、「おお。ゆっくり見てってください」と言われたが笑顔はなく、緊張した面持ちだった。ユニフォーム姿で帽子をかぶっているからか、取材時とはまったくの別人のように感じられた。

 選手たちはベンチ前に置かれたパイプ椅子に座る。ファンにできるだけ姿を見せてあげたい、という配慮なのかもしれない。軟式球を使用するのも、それゆえ安全性を考慮したのだろう。取材エリアも両サイドのファウルグラウンド上に設けられ、僕はそこで観戦させてもらった。

2008年のカープOB戦、往年の投球フォームで力投する安仁屋さん

 1回表、カープ先発の外木場さんはゆったりとしたフォームで丁寧に投げ、三者凡退に抑えてチェンジ。安仁屋さんがマウンドに上がる。いつの間にか雪はやんで、夕焼けのような日差しに照らされ、[沖縄の星]が光り輝いていた。

 1番、高橋慶彦は初球を打たせてピッチャーフライ。ところが、2番の木下富雄は2ストライクと追い込みながらデッドボール。安仁屋さんが一塁に出た木下に脱帽して頭を下げると、スタンドが笑いに包まれた。その後、3番の西田真二には右中間に運ばれたが、4番の山本浩二はファーストへのファウルフライに打ち取る。続く5番、萩原康弘──。

 そのとき、背後のスタンドから野次が飛んだ。

「いいぞ〜、あにや〜、まだまだいけるぞ〜」

 力強く澄み切った声が、静かな市民球場全体に響き渡った。安仁屋さんはトコトコと足踏みをしてこちらに向き直ると、再び脱帽して、ゆっくり、深々と頭を下げた。

(2008年11月12日・取材)

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