高校球界に元プロ監督たちが急増。イチローが示した技術伝承の意義 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

「ウチはまったく例年どおりやっています。お情けでベンチに入れるのはどうなのかなと思っているので。3年生の甲子園はなくなりましたが、それは1、2年生にとっても1回なくなったのは同じこと。ただ、ベンチ入りメンバーの入れ替えはできるので、試合展開によってはあまり出番のなかった3年生も使おうと思います。それは例年もやっていることですから」

 今秋の東京都大会では優勝を飾り、来春のセンバツ出場を確実にしている。1年生には将来性抜群の大型右腕・鈴木泰成もおり、若林監督のもとどこまでスケールアップできるか楽しみだ。

 天理の中村監督は高校時代に主将として全国制覇に導き、ドラフト2位で近鉄に入団している。珍しい左投右打の強打者として知られ、ウエスタン・リーグでは通算110本塁打を放つなど活躍した。だが、11年間の現役生活で一軍では1本もホームランを打つことができず、引退している。

 その後は藤井寺リトルシニア、天理大の監督などを経て、2015年から母校の監督に就任。2017年には有望選手が集まりながら全国の舞台で結果を残せずにいた天理を、27年ぶりに甲子園ベスト4へと導いた。

 選手個々の持ち味を引き出す手法は、プロで苦労した経験が生きているのだろう。今秋の近畿大会は準々決勝で大阪桐蔭に大差で敗れ、来春のセンバツ出場は微妙な情勢。それでも来年のドラフトの目玉になりうる大器・達孝太を擁するだけに、天理から目が離せない。

 チームを甲子園へと導いた元プロ監督は他にもいる。今春に鹿児島城西を初の甲子園(大会は中止となり、今夏に選抜交流試合が開催)へと導いた佐々木誠監督。自身も甲子園準優勝投手で、早鞆(山口)を甲子園に導いた大越基監督など。

イチローから現役最後のメッセージ>>

 来春に甲子園に登場する可能性があるのは、矢上(島根)の山本翔監督である。

 福岡の伝統校・東筑から2001年ドラフト5巡目で広島に進んだものの、一軍出場のないまま2010年に退団。2013年から2年間は広島経済大の監督を務めた。

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