「2020年のFAは熱い」はずが...。大物たちが残留するストーブリーグ事情

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

【短期連載】FAは誰を幸せにするのか?(1)

 日本シリーズが瞬く間に終わり、"ストーブリーグ"に突入した。メディアの報道やファンの関心は、来季に向けた人事や移籍が中心となっている。

 ストーブリーグは英語の「Hot Stove League」に由来する表現だ。メジャーリーグがオフシーズンになる冬、ファンたちがストーブを囲みながら好きなチームや選手の移籍から契約更改、果てはゴシップまで、あれこれ議論を楽しむことを示す言葉だった。それが日本でも定着し、主に移籍動向を表す表現として知られている。

動向が注目されていた山田哲人だったが、FA宣言はせずヤクルトに残留することになった動向が注目されていた山田哲人だったが、FA宣言はせずヤクルトに残留することになった コロナ禍で開幕が3カ月遅れ、パンデミックの影響がオフになっても続く2020年。今冬のストーブリーグで特に注目されるのは、菅野智之(巨人)、有原航平、西川遥輝(ともに日本ハム)のポスティングシステムによるメジャー移籍が実現されるのか。そして国内フリーエージェント(FA)権を保有する89人の動向だ(*97人が取得したが、8選手は現役引退)。

「2020年のFAは熱い」----。

 今季開幕前からそう言われてきた理由は、新たに国内FA権を取得した21選手のなかに"大物"が多く含まれるからだろう。

 2年連続で最優秀防御率、自身初の沢村賞に輝いた左腕投手の大野雄大はメジャーへのポスティングも含めて去就が注目されたなか、中日と年俸3億円プラス出来高の3年契約と報じられる条件で、FA権を行使せずに残留(※年俸はすべて推定、以下同)。今季年俸は1億3000万円プラス出来高だったが、FA権を取得したことで好条件を勝ち取った。

 もうひとりの目玉、過去3度トリプルスリーを達成している山田哲人もFA権を行使せず、ヤクルトと7年35億円プラス出来高とされる超大型契約を結んだ。「いつも『お金がない』と言っていたヤクルトだが、あるじゃないか」と球界関係者を驚かせた。

 各球団にとってコロナ禍による減収の影響は大きい一方、近年はスタジアムビジネスで順調に収益を伸ばしており、大物選手がこうした大型契約を結ぶケースは今後増えていくかもしれない。

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