低身長をも武器にする。「小さな大投手」たちがプロで輝ける理由

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi
  • photo by Kyodo News

 新型コロナウイルスの影響で異例づくめだった今シーズンはソフトバンクの4年連続日本一で幕を下ろし、ストーブリーグに突入した。今シーズンに国内FA権を取得した選手の中で、去就が注目されている選手のひとりが、ヤクルトの小川泰弘だ。

8月のDeNA戦でノーヒットノーランを達成したヤクルトの小川8月のDeNA戦でノーヒットノーランを達成したヤクルトの小川 ルーキーイヤーの2013年は新人王に加えて最多勝利と最高勝率(16勝4敗)のタイトルを獲得し、その後もヤクルトの主力投手として活躍。今シーズンは5年ぶりとなる2ケタ勝利(10勝8敗)を挙げ、史上82人目となるノーヒットノーラン(8月15日のDeNA戦)も達成した。

「ライアン」という愛称の由来でもあるMLBの大投手、ノーラン・ライアンを彷彿とさせるダイナミックなフォームが印象的だが、小川の身長は171cm。プロ野球界においては小柄な部類に入る。プロ入り前には自身の身長について悩んだこともあったそうだが、その答えが、体を効率よく使える現在のフォームだった。

 左足を高く上げる独特なモーションから、140キロ代中盤のストレートと、カットボール、スライダー、チェンジアップといった変化球を駆使し、多くの強打者に立ち向かってきた。まだ30歳で、今シーズンは本来の球威が戻り、先発ローテーションを1年間守れるスタミナも健在。獲得したい球団が多そうなだけに、小川がどのような決断を下すのか注目したい。

 一般的に投手は、「長身のほうが有利」と言われている。高い位置から投げ下ろすことができるため、いわゆる「角度がある」ボールになり、変化球の落ち幅も大きくなる。さらに、長い腕のしなりを生かして速いボールを投げやすいことなどが背景にある。

 それゆえ小川のように、体は小さくてもプロで奮闘する投手は、そのチームのファンでなくても思わず応援してしまいたくなる気持ちが湧いてくるもの。長くヤクルト投手陣を牽引してきた石川雅規がまさにそうだ。

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