八重樫幸雄「あの時のアイツだ!」。プロ入りした西本聖を見て驚いた (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

【コントロールとボールのキレが光っていた高校時代の西本】

―― 一色監督からの直々の頼みとなると、さすがに断れないですよね。

八重樫 そうなんだよ。すると翌日、ちゃんと別のチケットも用意してわざわざ迎えに来てくれて、そのまま松山商業に行ったんです。その日は八幡浜工業高校との練習試合だったんだけど、驚いたのは、練習試合にもかかわらず入り口に机といすを置いて、チケットを売っていたんだよ。確か一枚50円くらいで、地元のお年寄りが大勢集まっていたな。きちんと放送部がアナウンスもしていて、そんなことは東北ではあり得なかったから、「さすが野球大国だな」と驚きました。

――その試合で西本さんは投げたんですか?

八重樫 そうそう。松山商業は西本がピッチャーで、八幡浜工業には河埜(和正)の弟、のちに南海に入る敬幸がいたな。

――西本さんは、当時から左足を高く上げるピッチングフォームで、シュートを投げていたんですか?

八重樫 いや、当時はあんなに足を高く上げるフォームじゃなかったし、シュートも投げていなかったと思う。あとで確認したら、「シュートはプロに入ってから覚えた」と言っていたよ。

――プロで成功する片鱗のようなものはありましたか?

八重樫 コントロールはよかったし、キレのあるいいボールを投げていた印象があるな。でも、僕はプロに入って3年目で、すでにプロの一流投手のボールを見ていたから、そこまで圧倒されるような驚きはなかったけどね。

―― 一色監督は、どうしても八重樫さんに西本さんを見せたかったんですかね?

八重樫 うん、たぶんそうだと思いますよ。「八重樫、どう思う?」って聞かれたから、さっき言ったようなことを監督に伝えました。でも、プロで対戦することになるとは思わなかったな。ある日、選手名鑑を見ていて「西本聖......、松山商業なのか......」と思って、「あっ、あの時のアイツだ!」って(笑)。あとで、僕が松山商業まで見に行っていたことを本人に伝えたけど、西本も驚いていたよ。

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