なぜ神宮球場で呑むビールはうまいのか。「売り子」あるあるとゲン担ぎの飲み方 (4ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

「えっ、そんなことあるんですか? 面と向かって言われたことはないですけど、もしも、『お前からビールを買ったから負けた』とか言われたら、『私は何も関係ないです』って言っちゃうでしょうね(笑)」

 そりゃそうだ(笑)。チームの勝敗、選手の成績と売り子さんは何も関係がない。わかってはいるものの、ついついゲン担ぎをしてしまうことを許してほしい。

 関東の売り子さんたちは、神宮球場だけでなく、メットライフドームやZOZOマリンスタジアムと掛け持ちする子も多いのだという。実際に他の球場で観戦していて、「あっ、あの売り子さん、神宮にもいるな」と思うことはしばしばある。彼女たちにとっては急勾配のメットライフドームや、アップダウンの激しい東京ドームよりも「平坦な神宮球場は売りやすい」そうだ。そして、「ドームよりも屋外球場は気持ちいい」のだという。

 売り子さんのひとりがこんなことを言った。

「コンビニで買えば300円程度のビールを、私たちは750円で売っています。それは本当にありがたいことです。だから、私たちは750円以上の付加価値をお客さんに提供する責任があると思っています」

 この言葉を聞いて、思わずグッときた。「球場で呑むビールが美味しいのは、そこに生の野球があるからだ」と思っていた。でも、さらにそこには「売り子さんたちの華やかな笑顔と努力」も加味されていることに気がついたからだ。

 神宮球場のビールは美味しい――。長年の経験から理解していたことではあるけれど、彼女の言葉を聞いて、あらためてその理由の一端がわかったような気がした。

 神宮球場では、9月25日から阪神タイガースとの3連戦が行なわれている。本格的な秋の訪れの中で呑むビールも美味しいことだろう。でも、呑みすぎ注意。コロナ禍において、マスクもつけずに酔って大騒ぎしたり、ビールをこぼして隣のお客さんに迷惑をかけたりするのは論外だ。ビールは美味しく、楽しく。ヤクルトは強く、たくましく。さぁ、神宮球場へ行こう!

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