田澤純一が語るいきなりメジャーの12年間「自信があったわけではなかった」 (4ページ目)

  • 白鳥純一●取材・文 text by Shiratori Junichi

 優勝争いを続けるチームで登板を重ねる田澤の心の支えは、2013年シーズンにレッドソックスに移籍してきた上原の存在だったという。

「上原さんは、オンとオフの切り替えがすさまじく早いんです。ブルペンでは他会場の途中経過とかを話しながら肩を作っているのに、試合ではきちんと抑える。先発、中継ぎ、抑えと、すべてのポジションで結果を出している人はあまりいない。マネができたらいいですけど、難しいですよね(笑)」

 田澤がレッドソックスの一員として、ワールドチャンピオンを掴み取った2013年。シーズンでもっとも印象に残る試合を尋ねると、デトロイト・タイガースとのリーグチャンピオンシップを挙げた。

 ワールドシリーズの出場と、リーグ優勝がかかった第6戦。7回途中から登板した田澤がミゲル・カブレラを打ち取り、裏の攻撃でシェーン・ビクトリーノの逆転満塁弾を呼び込んで、勝利投手になった試合だ。

「僕は緊張しやすいタイプ。ピンチ(2死1、2塁)での登板だったので、腹を括っていました。『使った監督が悪い』というくらいの気持ちで、やれることを一生懸命やる。無事に抑えられてよかったです。実はこの時、上原さんが、『対戦成績が悪いから、ミゲル・カブレラには投げたくない』と話していたことを後に知りました。『先に伝えておいてくれよ』と(笑)」

 その後、2017年にはマイアミ・マーリンズ、2018年にはデトロイト・タイガース、ロサンゼルス・エンゼルスと活躍の場所を移しながら、通算388試合に登板して21勝4セーブ89ホールドという成績を残した。

「一流の選手と一緒にプレーできましたし、貴重な経験ができたと思います。ヒートベアーズのチームメートに聞かれたことは、なるべく答えるようにしていますし、積極的に協力していきたいですね」

 9月7日には「田澤ルール」が廃止されて周囲は騒がしくなっているが、田澤は12年ぶりの日本のマウンドで勝利のために投げ続けている。

(後編につづく)

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