浅村栄斗「能力だけで打ち続けるのは無理」。フロック→真の実力へ変貌した転機 (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

 配球の傾向がわかると自ずと成績も上がり、逆に自分のパターンも客観的に分析できるようになった。

 2年間の蹉跌(さてつ)を経て、浅村はようやくがむしゃらの殻を破った。2016年は2013年以来となる打率3割をマークし、24本塁打、82打点。キャリアハイに次ぐ成績は、たしかな自信を示した。

「相手が自分を調べてきている以上は、こっちが上回らないと対応できなくなる。そのせめぎ合いに勝っていかないと、安定して結果を残せないんだなって気づきました」

 打席で巡らせていた思考は、自然と自身のパフォーマンスへと向けられていった。

 2017年までの浅村は、30本塁打を一度もクリアしたことがなく、長距離打者ではなく中距離打者のイメージが強かった。「ホームランバッターではない」との自覚は一貫してはいる。それでも、2018年には打率向上のため飛距離を求めるようにもなった。

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 違和感に気づいたのは、交流戦が終わったあたりだった。この時点で打率は.298、14本塁打。浅村自身、「パフォーマンスはよかった」と認めてはいたが、その一方で、打球が上がらない。つまり、長打が思っていた以上に少なかったのである。

 当時の状態を、浅村がこう解説していた。

「自分がイメージしている打球とのズレがありましたね。ボールを捉えてもラインドライブがかかってしまって、結果的に単打になってしまうというか。ホームランをもう少し増やしたいとも考えていた時期だったんで、『インパクト時に一番力が伝わるように打ちたい』とフォームを修正しました」

 それまでの浅村は、極端に言えばスイングの始動からインパクトまで100%の力を使っていったことが、飛距離の妨げとなっていた。

 打撃フォームを見つめ直すなか、力んだままバットを振っていたことに気づいた浅村は、構えた際にグリップを下げた。「力を抜く」というより「肩を下げる」イメージだという。

 最大出力でボールを捉えられるよう、始動からスイングまで理想的な力の伝達方法を試行錯誤した結果が、その形になったというわけだ。

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