ホークスにまたまた期待の新星。栗原陵矢がブレイクまでに6年を要した理由 (4ページ目)

  • 安部昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Koike Yoshihiro

 そのままシートノックが始まったが、ボール回しでの栗原のスローイングは腕のしなりだけで投げる"手投げ"で、フットワークを使って投げないから、せっかくの"強肩"も生きず、送球もあちこちに散らばっていた。

 センバツに出たことで変わってしまったのか、それとも注目されるのが早すぎたのか......チームの指導方針である「のびのび」が悪い方に出てしまったと思った。

 試合中でも「自分たちはうまい」と思ってプレーしているような振る舞いが端々に見えて、このままだったら才能の開花は期待できない......そんな思いだったから、プロに進んだ栗原のことは逆に気になっていた。

 ホークスの次期レギュラーマスク──それが栗原に課せられた"将来"だったはずだ。だが、ファームでともに汗を流した育成出身の甲斐拓也がその座を奪い取って、今は不動の地位を築いている。

 そんな逆風のなか、一級品のバットコントロールと持ち前の敏捷性を生かし、常勝・ソフトバンクの"隙間"にスッと忍び込んできた。悔しさのなか、懸命にバットを振り続けたのだろう。

 いまにして思えば、ソフトバンクというチームに入ったことがよかったのかもしれない。このチームは"野球上手"な人が集まっているだけではなく、若手も中堅もベテランも、みんなが必死になってポジションを獲りにいく。そんな環境に置かれたら、栗原だって目の色を変えてやらざるを得なかったはずだ。

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