2020.05.19

「ナックルの名手」を真似たホークスの
大エースは、一発で爪を剥いだ

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

「令和に語る、昭和プロ野球の仕事人」 第9回 三浦清弘・前編 (第1回から読む>>)

 平成の頃から、どこかセピア色に映っていた「昭和」。まして元号は令和に変わり昭和は遠い過去になろうとしている。しかし、その時代のプロ野球には強烈なキャラの選手たちが大勢いて、ファンを楽しませてくれたことを忘れてはならない。

「昭和プロ野球人」の過去の貴重なインタビュー素材を発掘し、その真髄に迫るシリーズの9人目は、個性派のなかでも超個性派。当時を知る多くの野球人が”日本で唯一、本物のナックルボールの使い手だった”と証言する三浦清弘さんが自ら語った魔球にまつわるエピソードを記していきたい。

1969年、ナックルボールの使い手だった三浦清弘の投球フォーム(写真=時事フォト)
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 三浦清弘さんに会いに行ったのは2009年9月。レッドソックスの[ナックルボーラー]ティム・ウェイクフィールドが、同年のMLBオールスターに42歳で初選出されたことがきっかけだった。旧知の雑誌編集者から「日本でもナックルがすごいピッチャーがいたって、知ってました?」と聞かれ、それが南海(現・ソフトバンク)で活躍した三浦さんだった。

 知らなかった僕は俄然、興味を持った。その編集者が[日本人初の大リーガー]村上雅則さん(元・南海ほか)に取材した際、ウェイクフィールドのナックルが話題に上り、「南海時代に6年先輩の三浦さんが投げていました。私が見たなかで、日本人で本当にナックルを使っていたのはあの人ぐらいですよ」と話していたという。
 
 近年では、左腕の前田幸長(元・ロッテほか)がナックルを持ち球にしていた。巨人時代、東京ドームでの登場テーマ曲が大滝詠一の『恋のナックルボール』だったときもあるほど。ただ、その軌道は揺れが少なくフォークボールに近いもので、声高に「ナックルの使い手」とは言い難い。それだけに「本当に使っていた」という村上さんの言葉が強く印象に残った。