2020.04.26

「目をつぶって打ったら本塁打」。
長嶋一茂の初安打に見たミスター復活の夢

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

 しかし、一茂は長嶋茂雄にはなれなかった(プロ野球史上、誰も長嶋茂雄のようなスター選手にはなれていないが)。プロ1年目は88試合に出場して、打率.203、本塁打4。その後も、レギュラーを奪うことはなかった。

 東京六大学のリーグ戦中、神宮球場でスワローズの選手たちとすれ違う機会が何度かあった。私は厚かましくも一茂本人に対して、「プロ野球はすごいんですか?」と尋ねた。「おまえ、大学とプロじゃ違うよ。広島の大野(豊)の球なんか消えるぞ。全然、見えないから」と言われたことを覚えている。

 1993年、父親が指揮を執っていた読売ジャイアンツに移籍。親子で同じ球団のユニフォームを着たことが話題になったものの、1996年限りで現役を引退した。プロ7年間で放ったホームランはわずか18本。変化球に泳がされ、速球に差し込まれる場面ばかりを見たような気がする。

 現在、タレント、コメンテーターとして活躍する一茂は、プロ初ホームランについて、「目をつぶって打ったら当たっちゃった」と語っている。あれは本当にマグレだったのだろうか......。

 バックスクリーンに飛び込むホームランに、私は"長嶋茂雄復活"の夢を見た。はかなく消えてしまったからこそ、30年以上前のあの一本が忘れられないのかもしれない。

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