千賀、甲斐は三軍から大化け。大道典良が明かすホークス育成法の秘密 (2ページ目)

  • 岡田真理●構成 text by Okada Mari
  • 寺崎江月●取材協力 cooperation by Terasaki Egetsu

 ホークスがこれまで見つけた"俺だけのコイツ"の代表格が、2010年の育成ドラフト4位・千賀滉大だ。ある日、名古屋市のスポーツ店の店主だった西川正二さん(故人)から、「蒲郡高校に千賀といういい投手がいるので見に来てもらえませんか」と電話があった。

 それまで誰も千賀の名を聞いたことがなかったが、視察に行くと、当時の高校生ではまだ珍しかった最速144キロのストレートを投げ込んでいた。当時の小川一夫スカウト(現ホークス二軍監督)は、「球に力強さはなかったが、それでもスピードガンよりも速い印象があり、体のしなやかさも感じた」と語っていた。

 しかし、体は華奢で線がとても細く、支配下で獲得するレベルには及ばないという判断だった。スカウトとしては推しづらい。ただ、あのストレートはどうも印象に残る。それがまさに千賀の"一芸"だった。

 千賀のことは、どの球団も視察どころか調査すらしておらず、小川スカウトにとってまさに"俺だけのコイツ"だった。ホークスでは翌2011年から三軍制が導入されることが決まっており、育てる環境は整っている。小川スカウトは、千賀を隠し玉として育成ドラフトで指名することにしたのだ。

 1年目の千賀は、倉野信次コーチが「相当、僕にしごかれましたね」と苦笑いするほどマンツーマンで体を鍛え上げた。私も千賀のプロ入り3年目にホークスにコーチとして復帰したが、球を投げている千賀よりも、倉野コーチと一緒に体幹トレーニングを行なっている姿のほうが強く印象に残っている。体づくりにじっくり時間をかけられるのも、三軍制のあるホークスの強みだといえる。

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