「日本の野球ってすげぇんだぜ」宮本和知は五輪での金メダルを自信にした (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Jiji photo

 対する日本もアメリカの先発、ジョン・フーバーから4回、4番の荒井幸雄(日本石油、のちにヤクルト)が同点タイムリー、5番の広澤克己(明治大、のちにヤクルト)が逆転タイムリーを放って、2-1と逆転に成功した。続く5回も日本は嶋田宗彦(住友金属、のちに阪神)のタイムリーツーベースで1点を追加。3-1とリードを2点に広げた。

 6回までアメリカ打線をマックの一発だけに抑えてきた伊東は、7回、ワンアウトからこの試合、初めてのフォアボールを2番のクリス・グウィンに与えてしまう。続くバッターは3番のクラーク。伊東がクラークを2-2と追い込んだところで、突然、松永怜一監督がベンチを出た。なんと、ここで宮本が投入される。

「そうでしたっけ......覚えてないなぁ。でもアメリカのバッターと対戦した時、僕の支えになったのは5月のキューバとの親善試合での経験でした。あの時、キューバのバッター、金属バットだったんですよ。後楽園球場だったですけど、よく覚えてます。キューバのバッターが金属バットをぶんぶん振り回すのが怖くてね。オリンピックも金属バットでしたけど、デカいバッターが金属バットを持つことへの免疫は、あの時に身についていましたね」

 宮本はクラークに対して、2-2からの1球目、得意のカーブを投じた。緩いタテのカーブにクラークはタイミングが合わず、引っかけてセカンドへゴロを転がした。これでワンアウト。続くバッターは、4番のマグワイア----。

「マグワイアにも、全球カーブだったと思います。キューバ戦でもカーブばっかりだったし、キャッチャーの嶋田(宗彦)さん、僕にはカーブのサインしか出さないんですよ。だからカーブを続けたら、ライト前へ打たれた......んでしたっけ」

 実際、この場面で宮本はマグワイアに対して5球続けてカーブを投げている。初球、2球目と高めに外れて、3球目、4球目はアウトコースでストライクを取った。2-2となった5球目、さすがにマグワイアもこれだけカーブが続けば、タイミングを合わせてくる。マグワイアはアウトコース低めのカーブを押っつけて、ライト前へ打ち返した。その打球を処理したライトの荒井が、中継に入ったファーストの広澤へ返す。その瞬間、3塁を回ろうとしたグウィンの動きを広澤が見逃さず、すかさずサードへ送球。グウィンがタッチアウトとなって、これでツーアウト1塁となった。

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