鈴木誠也が培ったリーダーの自覚「自分も変わらないといけないなって」 (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Getty Images

「これから大事になるのは"個"しかない。まだチームが弱い時に、黒田(博樹)さんと新井さんが引っ張ってくれて、みんな勝つために必要なことを教えてもらった。ふたりが引退されて、そして丸さんもいなくなった。自分たちがやるべきことをわかっていないと厳しくなる。やるべきことを忘れてしまい、個がバラバラになったら、また勝てなかった時のチームに戻ってしまうんじゃないかと......」

 2015年に広島に復帰した黒田と新井から受けた影響は大きい。新たに生まれた広島のよき伝統を継承しなければいけない思いが強い。それは同時に、広島が常に上位にい続けるための条件だと感じている。

 チームの牽引役になるのであれば、自分が変わらなければならない。数年前までは打ち取られた自分への怒りから、ベンチに戻るとバッティンググローブを叩きつけ、感情を爆発させることもあった。無意識の行動であり、本人のなかでは切り替えスイッチのようなものだったが、周囲に与える影響も少なからずある。

 だが、チーム内の立場が変わっていったことで立ち居振る舞いも意識するようになった。その意識は2019年、さらに強くなった。

「チームも大きく変わるシーズンで、自分も変わらないといけないなって。自分でも変わりたいと思っていた」

 その言葉どおり、プレーでチームを引っ張った。タイトルを獲得した打率と出塁率だけではない。167安打、28本塁打、87打点、25盗塁と、打撃全部門でチームトップの数字を残した。それでも鈴木に慢心はない。

「すべて足りない。もっともっとレベルアップしていかないといけない。満足することなく、これまでどおり、向上心を持ってやっていきたい」

 どれほどの数字を残しても、充足感を得ない向上心が成長のエネルギーとなる。広島の未来にとっても大事な2020年、チームの先頭には若き主砲の鈴木がいる。

 くわえて、侍ジャパンの一員として東京五輪を控える。シーズン中の開催ということでMLBに所属する選手は出場しない。大会への本気度は、国によって温度差があるのは事実。そのジレンマはどこかで選手も感じていることだろう。

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