遅れてきた東洋大3羽烏のひとり。中日・梅津晃大はスケールがちがう (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Kyodo News

 ドラフト2位で中日に入団するも、右肩に"インピンジメント症候群"という症状が出た。インピンジメント症候群とは、肩を上げようとしていくと、ある角度で痛みや引っかかりが起こり、それ以上、上がらなくなることである。

 ウエスタンリーグで投げられるようになったのも5月あたりからで、フレッシュオールスターでの登板を聞いたときも、「本当に大丈夫なのか......」と思っていたほどだ。だからこそ、あれだけのボールを投げたこと自体、驚いたし、うれしかった。

 ボールの威力も投げっぷりも見事だったが、思わず「すごい」と感心したのは、ストレート1本勝負と見せかけておいて、打者にも見ている者にもわからないように、こっそりとボールを動かしていたことだ。

 登板直後のインタビューで「真っすぐだけと危ないなと思ったバッターには、ちょっと変化球も混ぜながら......」と証言したように、したたかな一面をのぞかせた。これも大事なピッチングセンスである。

 元チームメイトの上茶谷は、ローテーション投手としてここまで(7月14日現在)14試合に登板し、5勝3敗、防御率3.46。甲斐野はリリーフとして36試合に登板し、1勝1敗7セーブ、防御率2.43。ともに一軍で確固たる実績を残している。

 そんな彼らに比べれば比較にならない1年目であろうが、梅のプロ野球人生はまだ始まったばかり。

 昨年のドラフト前、あらゆるメディアで東洋大の3人についてこう言ってきた。

「今は梅津が3番目かもしれませんが、5年経ったら梅津が1番になっていても、なんの不思議もありません」

 調子の良し悪しに関わらず、試合をつくれる上茶谷。快速球とフォークでここぞという場面で三振を奪える甲斐野。彼らと比べると、今はまだ特長はないが、ボールの威力、質、なによりスケール感は、梅津が一番だと思っている。

 フレッシュオールスターでの梅津のピッチングを見て、本格化するまでそう時間はかからないと見た。胸のすくような痛快なピッチングをできる若武者が、またひとりプロ野球界に登場したのは間違いない。

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