2019.06.30

平井正史コーチが説く能力アップ術
「選手を過保護にしてはいけない」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

【連載】チームを変えるコーチの言葉~平井正史(4)

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 リリーフから再転向し、今年は先発で”奮投”するオリックス・山本由伸。高卒1年目から一軍で先発登板を果たした逸材だが、2年目の昨季は7月末に登録を抹消されている。最短10日で復帰したように、疲労を取り除くことが抹消の理由と報じられていたが、実質、故障を未然に防いだとも言えるこの措置。現場ではどんな判断がなされたのか。投手コーチの平井正史に聞いた。

ケガをすることはすべてマイナスではないと語るオリックス平井正史コーチ「山本の場合、入団当初から『故障させないことが第一』と考えて接してきました。投げ方もそう、投げる量もそう、これから先、コーチとしてできることはしてあげたいなと。去年抹消したのも『故障させる前に……』ということです。試合中、ブルペンにいると使いたくなってしまう、というのもありました。本人は『落ちるのは嫌だ』って言っていましたが、彼の将来を考えると、リフレッシュさせるのも大事だと判断しました」

 昨年、54試合に救援登板した山本は、抹消された時点で39試合に投げていた。チームはその時点で81試合を消化していたが、山本自身の登録は69試合だったから、そのうちの39試合と考えればかなり多い。かねてから平井が求める「投げたがり」のひとりでもあり、チームとしてブレーキをかけないといけない状態だったのだ。

「もちろん、ブレーキが必要なのは山本だけじゃありません。シーズンを戦っていくなかで、本当に『こいつに抜けられると困る』というピッチャーに無理をさせたらダメですし、プロ野球選手は一人ひとりが個人事業主であって、ベンチも故障させるために使っているわけではありません。故障の前に気づいてあげる。それはコーチとして大事な仕事のひとつです」

 平井自身、オリックスでの現役時代に右ひじを故障し、手術した経験を持つ。その後、中日へ移籍した2003年、開幕当初からリリーフで登板していたが、5月下旬から先発に転向。これが功を奏して12勝6敗と好成績を残し、同年のカムバック賞を受賞した。