巨人・中川皓太が大胆に変貌。フォーム改造と「勝てばいいや」精神 (2ページ目)

  • 高橋憲治●文 text by Takahashi Kenji
  • photo by Kyodo News

「もともと投げていたスライダーは大きく曲がる球でした。見極められてしまうので、決め球とするには物足りませんでした。しかしフォーム変更後、スライダーの質が変わり、打者の手元で小さく鋭く曲がるようになった。実際に投げてみると、打者の反応が今までと違うんです。これは使えそうだと」

 スライダーは有効な武器となった。今シーズン、中川が奪った39個の三振のうち、25個がスライダーで仕留めたものだ。奪三振率も10.22と昨年(7.41)をはるかに上回っている。しかし中川は「三振を狙うかは状況次第です。意識して増やしてはいません」と話す。

 キレのいいストレートに加え、新たにスライダーという武器を手に入れた中川。もはや巨人ブルペンにいなくてはならない存在だが、その立場に立てられるようになった理由はスライダーだけではない。

「気持ちに余裕が生まれたことも大きな理由のひとつです」

 スライダーへの信頼がそうさせるのか、ネガティブな考えが浮かばなくなったと言うのだ。

「ファンの方は、最後に出てきた投手が三者凡退で締めた方がやっぱり気持ちいいですよね。僕も投手なので三者凡退できれいに終わらせたいという欲があります。とはいえ、相手だって必死ですから、塁に出してしまうこともあります。今まではそんな時に『ここでもうひとり出ると厳しいな』と考えて、丁寧にいこうと思って、かえってボールが甘くなって......ということがありました。でも今年はそういう考えが浮かばなくなりました。たとえ打たれて点差を詰められても、チームが勝てばいいやって」

 6月20日のオリックス戦。8回裏に逆転して4対2とリードした巨人は、9回のマウンドに中川を送った。中川はワンアウトから連打を浴びて一死一、二塁のピンチを背負った。しかし続く打者を注文通りのピッチャーゴロ併殺に打ち取り、巨人は勝利。ファンの歓声が上がり、選手たちは勝利の握手を重ねた。中川は最後まで堂々としていた。

 ファンは中川が9回のマウンドに上ったら、「中川なら締めてくれる。今日も『VIVA GIANTS』を歌えるぞ」と今や確信していることだろう。

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