巨人を戦力外=限界ではない。中井大介がDeNAで得た新感覚 (2ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Kyodo News

 元来、明るくフランクな性格の中井は、キャンプに入ると早い段階でチームに馴染んでいった。ほとんどが自分より若い選手だったが、率先して声を出し、明るい雰囲気を自らつくり上げた。沖縄での練習試合やオープン戦ではファーストストライクから振っていく積極的な打撃を披露し、塁上や守備の合間にはリラックスした笑顔も見られた。

 伊藤は、そんな初々しくも懸命な中井の様子をかたわらで見てきた。

「最初は不安だと言っていたけど、コミュニケーションが取れていたので、言うほど心配することはなかったですね。今では後輩と一緒に食事に行ったり、しっかり馴染んでいますよ。ただ、大事なのはこれから。中井も僕も、前のチームでは生え抜きでやってきたけど、それはもう終わったこと。お互い移籍してきた身だからこそ、結果を出さなければいけない。一緒に頑張っていきたいですよね」

 オープン戦で中井は、ラミレス監督に積極的に起用された。左投手が先発のときはスタメンを張り、貴重な右の代打としも勝負どころを任された。またセカンドを中心にサード、ファーストの守備にも入り、ユーティリティー性を発揮した。オープン戦17試合に出場し、打率.265というまずまずの成績で、開幕一軍を手中に収めるに至った。

 再びプロ野球選手として生きる場所を得た中井は、例年とは違った感覚で野球に向き合えているという。

「勝負の年であることは間違いないけど、それ以上に、監督やチームメイトから『楽しんでやろう』と声をかけられるので、本当にエンジョイすることを大切にしているんです。真剣さのなかにも、楽しむ場面をつくる。結果ばかりを気にすることなく、リラックスというか、ゆったりした気持ちで打席に立てれば、自分のいいところが出せるのかなって。結果にとらわれ過ぎるとプレッシャーがかかり、固くなってしまうタイプなので......」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る