自宅にマウンド、平均台でシャドー...。武田翔太の探求心が止まらない (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro


「できるだけ高いリリースポイントから投げ下ろして、できるだけ低めに決める。ヒザあたりの高さなら打っても内野ゴロにしかならないし、打たれたとしてもせいぜいシングルヒットじゃないですか。仮に高めにいっても、低めを狙って腕を叩いて投げた時の高めというのは、いちばん破壊力のあるストレートになるんですよ。自分としては、狙って投げているのは(構えた)ミットよりももっと下です。内角、外角はほとんど意識してないです。とにかく高い位置から低く、低く......です」

 そう語る武田だが、今春の練習試合、オープン戦と炎上が続いていた。しかし、3月13日の巨人戦では3イニングを投げ1安打無得点に抑え、さらに7奪三振と完璧なピッチングを見せた。そう言えば、キャンプ中にこんなことも言っていた。

「なんだが、やっと野球がわかってきたような......悩まなくなりましたね。"悩む"って、野球をやっていく上で邪魔なものなので。野球がわかり始めてきて、こういう時はこういう方法でやれば改善できるっていうのがようやくわかってきました。たとえばバランスが悪くなった時は、平均台の上でシャドー(ピッチング)をやってみるとか」

 昨年、何百万円の投資をして、武田は自宅にトレーニングルームをつくった。それもただのトレーニングルームじゃない。ミニマウンドがあって、そこでシャドーピッチングをしながら、超高速カメラで撮影して、数秒後にはモニターで再現できるという。

「試合が終わって帰ってから、12時頃からチェックしているんですよ」

 努力をひけらかすような男じゃない。ちょっと照れくさそうに言った。

「野球をやってきて、たぶん今が一番楽しいんじゃないですか。去年は、いつ辞めようか、なんて考えていた時期もあったので......。最近、人に教えられるようになりたいって思うようになってきたんです。教えるということは、自分で理解できていないといけないわけじゃないですか。それもシンプルな理論で、子どもに教えても理解できるような」

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