自宅にマウンド、平均台でシャドー...。武田翔太の探求心が止まらない (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro


 今から8年前、宮崎日大高校3年だった武田の球を受けている。武田は甲子園出場こそなかったが、九州屈指の本格派としてスカウトたちの注目の的になっていた。

 ピッチング前のストレッチから一緒に体を伸ばすと、その時から武田の人懐っこさが距離を近くして、それ以降、春のキャンプ取材では毎年顔を合わせていた。

 そして今年も、彼の方からいろいろと話をしてくれた。

「去年の後半からこのキャンプにかけて、じつは新しいことをやっていて......」

 ブルペンに隣接している室内練習場での立ち話になった。

「去年、フォームのことですごく悩んで、このままじゃ終わってしまうと思って、ちょっと勉強したんです」

 たしかに昨年の武田は、夏場まで調子が上がらず、7月の西武戦では先発するも2イニングで7点を奪われ、翌日には一軍登録を抹消される悔しい思いをしていた。

「あそこから、すべてを捨ててゼロに戻したんです。軸足に体重を乗せて、そこから体重移動して......というスタイルは、自分には合っていなかったんです。フラットな投球はつかまります」

 うしろから前に体を移動させる投げ方を、武田は「フラットな投球」と表現した。

「自分は身長もあるし、腕が長いので、その高さを目一杯利用したスタイル......"タテ軸"を利用する方が合っているということに気づいたというか。やっぱり、角度とボールの強さを意識して上から投げ下ろした方がいいんですよね」

 この日のブルペンが、じつにすばらしかった。気持ちよさそうに上から腕を振り下ろし、そのボールが高谷裕亮(ひろあき)の構えたミットにビシッと決まっていた。

2 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る