誰もが認める西川龍馬の天才的打撃力。広島のセンター争いが面白い (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 誰もが認める打力を持ちながらもレギュラーの座をつかみきれなかったのは、ライバルの存在もあるが、西川自身、殻を破れなかった印象がある。とくに昨シーズンは、守備面の不安が足を引っ張った。

 社会人時代まで本職としていたショートには田中広輔という絶対的な主力がいるため、昨年までは三塁を主戦場としてきた。だが送球難を露呈し、シーズン終盤は控えに回る機会が増えた。ポストシーズンの9試合(CS3試合、日本シリーズ6試合)でスタメン出場は一塁での1試合のみ。三塁での出場はなかった。

 そしてシーズン終了後、首脳陣は送球難の影響が持ち味であるバッティングに影響することを不安視して、昨年の秋季キャンプから"外野挑戦"を指示した。

 野間峻祥(のま・たかよし)の1強と見られていたセンター争いの対抗馬に浮上。巨人から加入した長野をはじめ、一塁と兼務する松山竜平やサビエル・バティスタなど打力を持ち味とする選手が揃うレフト争いにも加わる。

 当初は外野に専念する方針だったが、キャンプ2日目に自ら内野でのノックを直訴。プロ入りまで遊撃手としてやってきた自負がある。ただそれ以上に、バットで勝負する自信がある。

 右足から軸足となる左足に体重移動してトップをつくり、リズムよく再び右足にぶつけるようにしてインパクトへともっていく。 下半身始動の重要性は、オフに日本ハムの近藤健介らとの自主トレで再認識した。それにより、バットをムチのようにしならせる天性の打撃に磨きがかかった。

 東出輝裕打撃コーチも「左では松山と西川の技術は抜けている」と認める。他球団のキャンプで行なわれた練習試合前の打撃練習では、相手球団の打撃コーチが西川のバッティングを食い入るように見つめ、練習後に打撃論を聞く姿があった。当コーチがそのような行動に出たのは、西川と鈴木誠也の2人だけだった。

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