斎藤佑樹が30歳で原点回帰。「楽しむ自分を見てはしゃいでほしい」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 田口有史、スポルティーバ●写真 photo by Taguchi Yukihito,Sportiva

── それは、カッコよさを求めるのがカッコ悪いと思い込んでいたということですか。

斎藤 そう思っていました。でも、今はカッコよくなりたいと思って何が悪いの、というか、ナルシストでけっこう、というか(笑)。

── そういう、ちょうどいい感じの力の抜き具合というのは、生き方だけじゃなくてピッチングにもつながるんですか。

斎藤 そうなんです。何かにこだわるのがいいというわけでもない。フォームでも、こうじゃないといけないというこだわりを捨ててもいいのかな、と思ったりもします。プロで8年、いろんな人にいろんなことを教えていただいて知識も増えましたし、野球をする上でのテクニカルなこと、身体のことも勉強できたと思います。ただ、そういうものを得たことによって、自分が持っていた本能に近い感覚がちょっとぼやけたのかなとも思います。

吉田輝星のフィーバーぶりを見て感じたこと

── 今年、9度目のキャンプになります。プロ1年目、2011年の今頃のことを思い出すと、どのシーンが浮かんできますか。

斎藤 パッと思い浮かぶのは、名護のマウンドで韓国のチーム(サムスン)を相手にしたとき(2月13日の実戦デビュー)、(当時の)吉井(理人ピッチングコーチ)さんに「全部、真っすぐで勝負しろ」って言われて、真っすぐを投げたことですね。1イニングだけでしたけど、三者凡退でした。

── デビュー戦フィーバーで、名護に続く国道が大渋滞するのではないかと言われて、相手チームの専用レーンを確保するために一車線を封鎖するなんて話も出たほどでした。

斎藤 いろんなことが異常でしたね。あの時の風景は今でも僕のなかに残っています。今だからあの状況を受け入れられるということもあり得ないくらい、異常でした。

── 当時、朝、ホテルの部屋のカーテンを開けるのが憂鬱だとおっしゃっていました。

斎藤 ありましたね、そんなことも......とにかく誰かに見られているという感覚がイヤでたまらなかったんだと思います。そういう気持ちは今も変わりませんけど、ただ、そういう状況に対して、もう少し冷静でいられる自分はいてもよかったんじゃないかなという気持ちはあります。あの時の僕は、周りじゃなくて自分にばかりフォーカスしようという気持ちが強かったと思うんです。

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