ヤクルト投手陣の秋は脱スパルタ。
「再現性」をテーマに飛躍を誓う

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 山下令●写真 photo by Yamashita Ryo

 フェニックスリーグ(宮崎県西都市)も終盤の頃、ヤクルトの若手投手たちは間近に迫る秋季キャンプ(愛媛県松山市)に向けて、"心と体"の準備をはじめていた。

 梅野雄吾は「ヤベ、また地獄のキャンプだ」と、ゴムチューブを使ったトレーニング中に唐突につぶやき、風張蓮(かざはり・れん)は新人の大下佑馬からの質問に「松山では12分走にしてもタイム設定がここより厳しくなる」など、昨秋の地獄の様子を説明していた。

松山キャンプで投手陣は「再現性」をテーマに取り組んでいた松山キャンプで投手陣は「再現性」をテーマに取り組んでいた「実際に松山キャンプが来るのが怖いです。でも、あの練習のおかげで基本的な体力が上がり、しんどい中にもやることの意味が理解できた。それが今年の結果にもつながりました。西都での練習も厳しいのですが、松山に向けての下地づくりと思っています」(風張)

 そうして後日、最終クールに突入した松山秋季キャンプを取材すると、投手陣の練習は予想していた風景とは大きく違ったのだった。風張は今年の松山キャンプについて次のように説明してくれた。

「午前中はランニングがない感じで、脳から体に動きを伝達する力を養うために同じ動きを再現させるトレーニングがほとんどです。抜こうと思えば抜けるメニューなんですが、高い意識を持って取り組まなければ、自分の身にならないものばかりだと理解しています」

 梅野も「地獄じゃなかったですね」と話したが、安堵の様子はない。

「脳からの伝達など、コーチが考えて下さったメニューに、意識を高く持って取り組めば、自分に返ってくると思ってやっています」

 午前中の投手陣の練習を眺めていると、ふたりの話した通りだった。"ランジ"と呼ばれるムーブメントでは、片足を上げ、腰を落としながら前に踏み出し前進。一定の距離まで進んだところで、次は同じ動作をしながら後退し、元の位置へと戻る。

 田畑一也投手コーチは「ゆっくりでいいから正確に」と選手たちに声をかける。

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