2018.12.09

谷繁元信は炭谷銀仁朗の移籍に懐疑的。
「決断が2、3年遅かった」

  • 寺崎江月●取材・文 text by Terasaki Egetsu
  • photo by Kyodo News

 11月24日、西武からFA宣言した炭谷銀仁朗の巨人への移籍が決まった。2度のゴールデングラブ賞を獲得し、2015年にはベストナインにも輝いた炭谷の加入で、小林誠司らとの正捕手争いに注目が集まっている。

 しかし2018年シーズンを振り返ると、伊藤光(オリックス→DeNA)や大野奨太(日本ハム→中日)といった、炭谷同様に日本代表にも名を連ねた捕手たちは移籍先で思うような結果を残せなかった。移籍した捕手の難しさはどこにあるのか。2001年にベイスターズから中日に移籍し、両球団で日本一を経験した谷繁元信氏に話を聞いた。

西武からFA宣言し、巨人に加入した炭谷――今回の炭谷選手の移籍をどう見ていますか?

「炭谷は移籍を決断するのが2、3年遅かったように思います。ここ数年、西武では森(友哉)や岡田(雅利)などが台頭し、出場機会が減って規定打席にも達しなくなっていましたから。私から言わせれば、プロ野球は”試合に出てなんぼ”の世界。それは炭谷もわかっていたでしょうが、西武の生え抜き選手ですし、育ててもらった球団への恩や愛着があって判断が遅れたのかもしれませんね」

――谷繁さんの炭谷選手の評価は?

「捕手としての能力は、配球、スローイング、ブロッキングなど、どれをとっても球界の上位にあることは間違いありません。今年は地位を確立できずに終わりましたが、チームはペナントレースを制しましたし、その点では心置きなく巨人に行けるでしょう」

――今年の打撃成績を見ますと、炭谷選手は打率.248・0本塁打だったのに比べ、森選手は打率.275・16本塁打、岡田選手は打率.272・3本塁打でした。やはり多くのチームは「打てる捕手」を求めているのでしょうか?

「そこはチーム事情で変わると思います。たとえば、1番から7番までしっかりとした打線が組めるなら、打撃はイマイチでも守備が優れている捕手でいい。一方で、首脳陣が『打線に穴を開けたくない』と考えることもあります。今年の西武がまさにそうで、打線は強力でも森が多く起用されてベストナインを獲得しました。将来性という点も含めてでしょうが、西武では森が首脳陣の構想にもっともマッチしていたということです」

――巨人が炭谷選手を獲得した意図はどこにあるのでしょうか。

「小林(誠司)がチームの信頼を得られていないということでしょうね。監督が原(辰徳)さんに変わって来季を迎えるにあたり、首脳陣が『彼では心もとない』と判断したんだと思います。今年は宇佐見(真吾)やルーキーの大城(卓三)が起用されることも多かったですが、チームを勝利に導けるだけの経験ができたか、という点では疑問が残ります。

 来年は阿部(慎之助)が捕手に復帰するようですが、それはあくまでプラスアルファな部分。阿部の体の状態を考えるとシーズンを通しての活躍は難しいですから、1年間を戦うことを考えて炭谷を獲得した。小林はエースの菅野(智之)とバッテリーを組むことが多いですけど、春季キャンプやオープン戦での調子によっては、開幕戦から炭谷がマスクを被ることも十分にありえます」