スポ根漫画みたいなヤクルト秋季キャンプ。しごきの中にも遊び心あり (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 山下令●写真 photo by Yamashita Ryo

 ハードな練習以外にも頭を使ったスピーチなど、キャンプの内容は盛りだくさんだ。しかし選手たちにうんざりした様子はなく、「まだまだこれから」という活気に満ちていた。

 谷内亮太にそのことを伝えると、「去年は練習についていくことや、やり切ることに精一杯でしたからね」と言って、こう続けた。

「今年はこうした練習に対する免疫も体力もつきましたし、きつい練習をなんとか自分の力に変えようという気持ちが強く出ているからじゃないですかね」

 室内練習場での"夜間練習"を見終えて球場に戻ると、トレーニングルームからアイドルグループの楽曲が大音量で聞こえてきた。「オイオイ、オイオイオイ!」とライブ会場さながらの熱狂。様子をうかがうと、ウエイトする選手をほかの選手たちが取り囲んで励ましている。そこにはストイックが評判の谷内の姿もあった。

「僕も『オイオイ』とやりますよ(笑)。もちろんみんなライバルなんですけど、高いレベルで一致団結してやれたらいいですよね。誰かが強くなれば、オレもやらなきゃとなりますし、そこで切磋琢磨できればいい気流に乗っていけるんじゃないかと......。苦しい練習もみんなでやれば頑張れますしね」

 キャンプも残り数日となり、石井コーチはホワイトボードに新しい言葉を書き加えた。選手たちはすぐに気づき、じっくりと読み込む。石井コーチは言う。

「大事なのはこのキャンプが終わってからの2カ月をどう過ごすかです。僕らがいないところで、どれだけほかの人と違うことができるのか。それこそが"進歩の差"であり、"ライバルとの差"がつけられるんです」

 西浦直亨(なおみち)は今シーズン初めて規定打席に到達。ショートのレギュラーの座を引き寄せた状態で、この松山キャンプは練習に明け暮れた。

「シーズンの最後にバテてしまいましたからね。打撃、ランニング、守備......すべてを出し切らないといけない。自分の限界を超えて強くしていかないと、現状は変えられません。ここまでいい感じに追い込めていると思いますが、まだまだ満足してないですし、もっとやらないとダメです。せっかく松山でいい練習ができたので、オフにそれを無駄にしないようにやっていきたいと思っています」

 チームは来シーズンのスローガンを「躍進」と発表。それを実現するためには、松山キャンプで鍛え抜かれたメンバーたちの活躍が不可欠である。

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