キーマンは甲斐拓也。「アバウトに
構える」リードで勝利をもたらすか
マツダスタジアムでの日本シリーズは客席から戦況を眺めた。深秋の夜風はやはり冷たい。コートを福岡に置き忘れたことを後悔し震えながらの観戦だったが、スーツ男を取り囲む熱狂的で真っ赤な人々は本当に誰一人として「寒い」などと口にしていなかった。
初戦はソフトバンクのベンチに程近い三塁側内野席に座ったが、ざっと見渡したなかで見つけた鷹ファンは1組2名だけ。ソフトバンクはこれ以上ないアウェー感のなかで2試合を戦ってきた。
ここまで広島の足を完璧に封じているソフトバンクの正捕手・甲斐拓也 初戦はシリーズ史上32年ぶりというよもやの引き分け。第2戦はバンデンハークが広島打線に攻略されての敗戦。1敗1分で敵地2連戦を終えた工藤公康監督は29日、福岡に戻るとそのままヤフオクドームに向かい投手練習に顔を出した。
「日本シリーズに出場できたことでまた福岡のファンのみなさんに野球を観てもらえるのは嬉しいしありがたい。地元に帰ったら選手たちもノビノビできる。いい流れを持ってこられるように。タイに持ち込めば変わってくる」
重要な第3戦。ソフトバンクの先発はミランダだ。
補強期限目前の7月中旬にホークス入りした左腕は1カ月後にデビューすると、驚きの快投を続けた。
初登板から3連勝。なかでも衝撃だったのは8月25日の西武戦(ヤフオクドーム)だ。8回を終えた時点で失点どころか被安打もゼロ。球団史上75年ぶりという大記録は、9回先頭の秋山翔吾に安打を許したところで水泡に帰したが、あの超強力な獅子打線を震え上がらせた。
また、9月23日の日本ハム戦(ヤフオクドーム)でも7回途中1安打無失点という素晴らしい投球を見せている。
レギュラーシーズンでは8試合に登板して6勝1敗、防御率1.89と文句なしの成績を残した。
それを買われてクライマックスシリーズ(CS)では、日本ハムとのファーストステージ第1戦の先発に抜擢された。しかし、結果は3回1/3を3失点で降板と振るわず。CSファイナルステージの西武戦でも第2戦に先発したが、2回7失点とさらに大炎上してしまった。
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