ヤクルト荒木大輔は熱投→敗戦。石井丈裕は西武の勝利に複雑だった (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――石井さんが登板する第3戦に先駆けて、スワローズは第2戦で荒木投手を先発に起用しました。この試合はどんな心境でご覧になっていたんですか?

石井 僕は第3戦の登板が決まっていたので、この日は上がりで、神宮球場のトレーナー室でマッサージを受けていました。本当に複雑な心境で見ていましたね(笑)。正直なことを言えば、この日の大輔は全盛期と比べるとボールのスピードが落ちていました。それでも、シュート系の球とカーブをうまく使って、当時パ・リーグ随一の西武打線を抑えているのを見て、「いろいろ考えて投げているな」と感心していました。

――その試合は、清原和博選手に2ランホームランが飛び出して、ライオンズが2-0で勝利。荒木投手は6回2失点で降板し、敗戦投手になりました。

石井 チームとしてはいい結果なんですけど、複雑......本当に複雑でしたね。でも、打たれはしましたけど、彼のピッチングを見て「本当に復活したんだな」と、うれしかったことを覚えています。

第3戦は清原和博の言葉に救われた

――そして、いよいよ第3戦を迎えます。この日のコンディションはいかがでしたか?

石井 そんなに悪くなかったんですけど、この日7回表に広澤(克実)さんにソロホームランを打たれるんです。このときに、ものすごくカリカリしたことと、それを敏感に感じ取ったファーストの清原くんがマウンドまで来てくれて、「落ち着いて、落ち着いて」と声をかけてもらったことをよく覚えています。

――当時の記事を読むと、石井投手は「基本的には温和で優しい性格だけど、マウンド上では意識して、闘争心を掻き立てている」と書いてありましたが。

石井 温和で優しいかどうかは自分ではわからないけど、どうしてもバッターを攻め切れない部分があったので、自分で気持ちを高めて、アグレッシブにいくようにはしていました。でも、清原くんのひと言で冷静になれましたね。この時点で2-1でしたけど、「冷静になって、行けるところまで行こう」と思っていました。

――結局、この日は9回を1失点で完投して、見事に勝利投手に。対戦成績を2勝1敗としました。

石井 1勝1敗のタイだったということはもちろんわかっていたけど、正直、そこまでの余裕はなくて、「とにかく自分の力を発揮しよう」という思いだけでしたね。それがチームの勝利にもつながるし。

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