西武・橋上コーチ就任1年目、選手との信頼関係はズタズタだった (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「まず『三振を減らしてほしい』というのが第一でした。私が就任したその年、西武はチームで1200個近い三振をしていて、12球団で最も多かった。じゃあ、いかに数を減らせるかといったら、選手の意識を変えなきゃどうしようもない。

 ただ、かといって、三振を減らすことでもともと選手が持っているバッティングのポテンシャルを落としたり、攻撃力を低下させたりしては意味がないわけです。そこで、あくまでも攻撃力は最低でも維持させながら三振を減らす。そのために私自身、選手の意識の部分に働きかけようと、データを提示しながら個別の対話を心がけました」

 西武は2015年に1194三振、その前年も1234三振と、2年連続で1100三振を超えて12球団ワーストだった。特に2014年は本塁打が125本でトップなのに打率は.248でリーグワースト。盗塁数も少なく、一発頼みのような打線でチーム成績も2年続きでBクラスだった。

 それだけに橋上に対する周りの期待度は、目立った戦力の向上がないなかで「隠れた補強」と言われたほど。全体ミーティングとは別に、楽天、巨人で功を奏した個別ミーティングを行ない、狙い球の絞り込みなど具体的なアドバイスで選手の意識改革を促した。だが、最初はなかなかうまくいかなかったという。

「西武は個性豊かな選手が多い、というのがまずひとつ。と同時に、データや数字にあまり着目せずに選手が育ってきた過程があるような印象も受けました。ただ、そういう選手もある程度、一軍で数字を残している。となると、新たなものを取り込ませるのは難しいなと思いつつ、私自身には、呼ばれた以上はなんとかしなきゃ、という思いがある。

 だから若干、コミュニケーション不足かな、と感じながらも成果に執着し、結果を急ぎ過ぎた部分が、正直、ありましたね。やはり、根本的となる選手とのコミュニケーション、信頼関係の構築が必要不可欠であって、そこをないがしろにしてしまうと、どんな言葉で伝えても相手に浸透するものじゃないな、と痛感しました」

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