プロ野球「一軍・二軍ボーダーラインの心理」。ヤクルト谷内亮太の場合 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 開幕を二軍で迎えた谷内だが、「今年に限っていえば、打撃を追求してやってきました」と、その成果は如実に現れた。ファームとはいえ、右打者でありながら約2カ月にわたって打率.350以上をキープしていたのだ(現在は.342)。

「これまでのフォームを少し変えて、松元(ユウイチ)コーチや北川(博敏)コーチに、西都キャンプから教わってきたことがはまった感じがありました。そのなかでもこだわったのが、打席での質を上げるということでした。

 今までは引っかけたゴロが多い印象だったので、そういう"凡打"を少なくしていこうと。もちろん、いい打球がアウトになったり、よくない打球がヒットになったりすることもあります。それが野球なんですけど、今シーズンは『今のボールに対する入り方はよかったな』とか、なにかしら自分が納得できる打席がつくれるようになったと思います」

 二軍の松元打撃コーチは、谷内について次のように語る。

「今年は配球の勉強に力を入れています。たとえば右打ちをしたい場面で、相手バッテリーはそうさせないようにインサイド投げてきます。その(配球の)タイミングなどを勉強していて、それが打率にもつながっていると思います。これをすると決めたら、最後までやり続けることができる。お手本のような選手です」

 5月22日、谷内はファームで打率.364を残し、待ちに待った一軍昇格を果たした。それまでの時間を、どんな気持ちで過ごしていたのだろうか。

「野球をすること自体、一軍でも二軍でも同じです。僕ができることは、いつ上(一軍)に呼ばれても後悔しないように、下(二軍)でしっかり準備することでした。それを忘れなかったからモチベーションを切らさずにプレーすることができました。一軍ではバッティングで結果を出して、そこをほかの選手との違いにできればと思います」

 しかし、現実は厳しいものとなった。

 谷内はすべての内野を守れるユーティリティープレーヤーなのだが、昇格時の内野はファーストに坂口智隆と畠山和洋、セカンドに山田哲人、サードに大引啓次がいて、ショートに西浦直亨(なおみち)。大引がケガで離脱すると、川端慎吾が復帰。簡単に入り込めるポジションはなく、2試合で先発出場を果たすもインパクトを残すことはできなかった。

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