野村弘樹はヒジ手術をビデオ撮影。「ノミみたいな器具で骨を削られた」 (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

――そのように水が溜まったことも、それまではなかったんですね?

野村 ありませんでしたね。ですからその時も「あれっ」と思いはしたんですが、それほど大ごとだとは思いませんでした。違和感を覚えながらも練習を続けて、オープン戦では登板せず、水を抜きつつ様子を見ていました。

――ベイスターズが歓喜に沸いた1998年、野村さんは28試合に登板し、13勝8敗、防御率3.34という成績でリーグ優勝に貢献しました。西武ライオンズとの日本シリーズでは初戦と第4戦に先発登板しています(1勝1敗)。そのシーズンの投球回数は177回と3分の2でしたが、ずっと先発投手を務めてきた野村さんにとって、特別に多いイニング数というわけではありませんでした。

野村 自分では疲労も感じていませんでした。99年も痛いくらいで投げないわけにはいかないので、テーピングやサポーターをヒジに巻いてガチガチに固めて投げてみたのですが......ヒジに水が溜まって膨らんでいるから、手先がグニャグニャしている感じで、自分の腕とは思えなかった。

 感覚にズレがあって、腕を振ることなんかとても無理。ほかのピッチャーだったら投げられなかったかもしれません。でも、僕には「どうしても投げないといけない」という使命感があって、溜まった水を抜いては投げることの繰り返し。結局は、その場しのぎにすぎませんでした。

――野村さんは5月にヒジの手術に踏み切りましたね。

野村 ピッチャーからすれば、「ネズミ」と言われる骨棘(こつきょく)が出てくるのは仕方がない。問題は、それが遊離するかどうか。僕の場合は遊離して、骨棘も出てという感じで、取らないことにはとても投げられないということで手術をしました。

 手術を受ける時にはビデオカメラで撮影してもらいました。自分のヒジにメスが入る様子を確かめたかったからです。僕は全身麻酔されていますから、もちろん何もわからない。あとで手術の様子を見ましたが、ドクターが使っていたのはメスじゃなくて、ノミみたいでした。大工さんが使う道具と一緒です。それで飛び出た軟骨を取ってもらいました。手術のあと、その軟骨をホルマリン漬けにして家に置いていましたよ。

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