松坂大輔、ドラゴンズでの復活に向けて「痛みへの恐怖心」に勝てるか (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 恐怖心を拭い去るのは、並大抵なことではないからだ。右肩に異変を感じて以来、松坂は引き出しが豊富だったが故に、痛くないところを探しながらのフォームでもそれなりに投げられてしまった。期待に応えたいという責任感と、ピッチャーとしての能力の高さが、松坂にはあった。だから、痛くなくなったかと思えば、また痛み出すという悪循環を繰り返し、結果的に右肩の回復が遅れた。

 何度も痛みを経験しているからこそ、防衛本能が働くのだが、その半面、闘争本能が働いてスイッチが入れば、ギアはどんどん上がっていく。そして、トップギアに入れても痛みが出なければ、松坂にはバッターを抑えられるという絶対的な自信がある。

 実際、彼はそれだけの実績を積み重ねてきている。痛みが絶対に出ないという自信はなくとも、痛みさえ出なければバッターを圧倒できるという自信が揺らぐことはない。それが、今も昔も変わらない"松坂大輔"なのだ。

 だから、騒ぐのはまだ早い。

 今のところ、去年とそんなに変わっているわけではない。去年も今年も、痛みが出なければ一軍のスラッガーたちと真っ向から勝負できるピッチャーがそこにいる、というところは同じなのだ。

 ただ、去年は開幕が近づくにつれて、右肩に痛みが出てしまった。今年は今のところ、痛みが出ていない。明日は痛みが出るかもしれないという不安と戦いながら、床に入る毎日。朝、目覚めて、肩が上がればホッとする。痛くないところを探す必要がなければ、ヒジが下がることもないし、担ぐように投げることもなくなるし、開きが極端に早くなってしまうこともない。

 そういう松坂であり続ければ、これだけ経験値が高く、引き出しが豊富で、力のあるピッチャーが、ドラゴンズの戦力にならないはずはない。周囲の喧騒に惑わされることなく、ゆっくり、慎重に――それで十分、今の松坂大輔は勝てる。

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